ブックマークが30個になっていた話

「AIツールがありすぎて、何を選べばいいかわからない」——そう感じたまま、入れて、忘れて、また入れて、を繰り返していませんか。
私のブックマークの「AI」フォルダには30個近いリンクがあります。
半分は名前を見ても何のツールか思い出せません。
月末のカード明細に「Sub:〇〇 AI」が並ぶたびに、「これ、どれ使ってたっけ?」と固まる。
Web制作17年やってきて、1年半で15個のAIツールを試した結果、毎週使っているのは3つだけでした。
残った3つを見て最初は「やっぱり最大手は強い」みたいな話にしたかったんですが、構造を分解してみると違いました。
残ったか消えたかを分けたのは、ツールの良し悪しでも、私の意志でもなかった。
取捨選択するためのフレーム——つまり、自分なりの「AIツール 使い分け」の判断軸を持っていたかどうか、それだけでした。
月末請求書を見たときの「これ、どれ使ってたっけ」
毎月の請求書に「Sub:〇〇 AI」みたいな英字名が並んでいて、そのうち3〜4個は名前を見ても顔が浮かばない。
いちおうダッシュボードに入ってみると、最後のログインが2ヶ月前。
「機能はすごかったはずなんだけどな」と思いながら解約ボタンを押す。
先月もやった気がする。今月もやっています。
半分解約してもまた入れている自分への困惑
困惑するのは、解約した翌週には別のツールを入れていることです。
Xで誰かが「これヤバい」と言っていて、3秒で導入。
無料枠で試して、「便利そう」と思って課金。
1ヶ月後には開いていない。
これを去年からなん度も繰り返していました。
「自分はミーハーで意志が弱いんだろうな」と、半分諦めていた時期もあります。
でも、答えはそこじゃありませんでした。AIツールの使い分けに困っているように見えていた正体は、実は「数」の問題じゃなく、自分専用のカオスマップを持っていなかったことだったんです。
1年半で15個試して、残ったのは3つだった

ここから武器の話になります。
先に結論だけ言うと、1年半で15個試して、毎週使っているのは3つだけでした。
Claude Code、ChatGPT、higgsfield。あとの12個は、機能は素晴らしかったのに、私の手元では育ちませんでした。
なぜこの3つが残ったのか。
最初は「やっぱり最大手は強い」とか「動画生成は競合が少ないから」とか、ツール側の事情で説明しようとしました。
でも全部しっくりこない。
本当の共通点は、ツールの中じゃなくて、私の側にありました——という話を、まずは3つの「置き場所」から見ていきます。
残った3つの実名 — Claude Code / ChatGPT / higgsfield
具体的に書きます。
- Claude Code:Anthropic公式のコーディングAIです。
ターミナルやIDE拡張で動くエージェント型で、私の中では「コーディング工程」に固定で入っています。
コードベースを横断して読んでくれるので、リファクタや調査の入口がここに収束しました。 - ChatGPT:「壁打ち・構成工程」のツールです。
記事の骨子、商品の見出し、思考の整理。
アウトプットを取りに行くというより、自分の頭の中を可視化するために開く。
詳しくはChatGPTを壁打ち相手にしてモヤモヤを形にする使い方で書いた使い方が、ほぼそのまま定着しました。 - higgsfield:シネマティックな動画生成プラットフォームです。
Cinema Studio という機能があって、カメラの動きや画角まで指定できる。
私の中では「動画素材工程」のところに入っています。
SunoやKlingと並列で試したなかで、ここだけは置き場所が変わらず残りました。
3つともすごいツールではあります。
ただ、私の手元で残った理由はそれだけじゃない。
最初から「自分の制作フローのこの工程に入る」と分かって導入したのがこの3つでした。
各ツールが「置き場所」にどう収まっているか
並べてみると、シンプルです。
| ツール | 置き場所 | 隣にあるもの |
|---|---|---|
| Claude Code | コーディング工程 | エディタ、Git、ドキュメント |
| ChatGPT | 壁打ち・構成工程 | Notion、ホワイトボード、散歩中の音声メモ |
| higgsfield | 動画素材工程 | Premiere、サムネ作成、BGM選定 |
つまり、私の制作フローの中に「ここに入るやつ」というスロットが先にあって、それを埋めにいったのが3つでした。
逆に言えば、消えた12個は、スロットがないところに「便利そうだから」と置こうとして、行き場をなくしていった、ということになります。
AIツール 使い分けの正解は、ツールの数や種類じゃなく、置き場所の数で決まる——これが残った3つを並べて初めて見えたことです。
このあたりのレイヤー分けについては、AIエージェントの3つのレイヤー論(Manus・Dify・n8n)でも別の角度から書いていますし、自動化系まで広げて比較したい人はAI自動化ツール4強の使い分け(n8n・Opal・Agent Builder・Dify)のほうが地図として使いやすいかもしれません。
消えた12個に共通していた1つのこと

ここからが、この記事の本題です。
残った3つではなく、消えた12個を見たときに、ようやく構造が見えてきました。
AIツール 多すぎと感じる本当の理由は、ここに隠れていました。
12個を一つずつ思い出して並べてみたら、ぞっとしました。
それぞれは超有名で、機能も悪くなかった。
むしろ「2026年に絶対入れるべきAIツール」みたいな記事に必ず載っているようなものばかりでした。
なのに私の手元では、全部同じパターンで消えていった。
消えたツールのパターン分析 — 置き場所が見えないまま導入
消えた12個には、見事に共通点が一つだけありました。
「自分の制作フローのどこに入るか」が、導入した瞬間に答えられなかったことです。
導入経路もほぼ同じでした。
- Xのタイムラインで誰かが「これヤバい」と書いている
- 動画やGIFを2〜3秒見て、「便利そう」と思う
- 「ちょっと試してみるか」と無料枠に入る
- その日の作業に組み込めず、ブックマークだけ残る
- 1週間後、存在を忘れる
- 月末、請求書で再会する
ここで重要なのは、ステップ4です。
「その日の作業に組み込めなかった」のは、私の意志が弱いからじゃなくて、そもそも組み込む先が地図にプロットされていなかったから、です。
ツール側のせいではない。
よく「使いこなせない」「定着しない」って言葉でツールを責めがちですが、責めるべきは私の地図のほうでした。
地図の中にスロットがないものを買っても、置く場所がないので消えていくだけだった、ということです。
問題はツールじゃなく、自分の仕事の地図がなかったこと
ぶっちゃけ、足りなかったのはAIリテラシーじゃなくて「自分の仕事の地図」でした。
仕事プロセスの解像度が低いと、どんなツールも「便利そう」止まりで終わる。
Web制作17年やってきて、毎日コードもデザインも触っていたのに、自分の仕事を一枚の絵にしたことが一度もなかった。
これに気づいたとき、けっこう恥ずかしかったです。
地図がないまま新ツールを評価すると、評価軸はどうしても「機能の派手さ」になります。
「AIで動画が生成できる」「コードが書ける」「画像が変わる」。
すごい、けど、自分のどの工程に入るか分からない。それで結局、棚に置けない。
ちなみにこの構造は、別の文脈でもまったく同じ症状で出ます。
私はAI副業について考えていたとき、AIツールを入れているのに副業が稼げない構造もまったく同じルートだと気づきました。
地図がないまま新しい武器を増やし続けても、武器が散らかるだけで戦えるようにはならない。
散らかるとどうなるかというと、稼げなくなります。同じ根っこです。
似た現象は、企業のIT部門でも「SaaS Sprawl」(SaaSの散乱)という名前で問題になっていて、ツール疲れで年間2.5週間ぶんの生産性が消えるなんて推計もあります。
個人にも同じことが起きている——ということを、まず受け取ってもらえれば十分です。
本記事の主役は理論じゃなく、私たちの地図のほうです。
「便利そう」は判断じゃなく反射だった

ここまで書いてきて、自分の中でいちばん大きかった発見はこれです。
「便利そう」は、判断じゃなくて反射だった、ということ。
判断と反射は、似ているようで全然違います。
判断は、自分の地図と照らして「ここに入るな」と確認する作業です。
反射は、刺激に対して脳が勝手に反応しているだけ。
15個入れていた頃の私は、ほぼ100%反射で動いていました。
SNSの煽り温度→3秒導入→放置のループ
SNSのタイムラインって、刺激の温度がめちゃくちゃ高いんですよね。
「神ツール」「業界が変わる」「もう従来のやり方は終わった」。
あの温度を浴び続けると、3秒で課金ボタンが押せるようになります。
私の場合、ピーク時は週に2〜3個導入していました。
冷静に考えれば、「週に2〜3個も新しい仕事の道具を増やして、回るわけがない」って分かるはずです。
でも、その瞬間は「みんな使ってるから自分も置いていかれる」というFOMOで、判断機能がほぼオフになっています。
3秒で導入して、その日の作業に組み込もうとして、組み込めなくて、タブを閉じる。
これが12回繰り返されたのが、消えた12個でした。
ちなみに、これは「全部自動化しなきゃ」という発想で疲れていく人にも近い構造だと思います。
一度、全部自動化せず半自動化で楽になる発想に切り替えてから、ツール導入の判断にも余白が生まれた感覚があります。
反応と判断の境界線
反射と判断の境目は、たぶんこのあたりに引けます。
| 反射 | 判断 |
|---|---|
| SNSで見て、3秒で動く | 自分の地図に置けるか先に確認する |
| 「便利そう」で導入する | 「今のどの工程に入るか」を言語化してから導入する |
| 試してみてから考える | 入る場所がないなら試さないと決める |
| 「乗り遅れる」が動機 | 「ここが詰まっている」が動機 |
きれいに分けすぎている自覚はあります。
でも、自分が今どっちで動いているかを意識するだけで、反応が変わってきました。
新しいツールが流れてきたとき、「これ、どの工程に入るんだろう?」と一度問いを挟むだけで、3秒の課金が3日の保留になります。
3日経って思い出さないなら、自分の地図にはスロットがなかったということです。
残った3つが示しているもう一つのこと

ここで、もう一段だけ鏡を立てさせてください。
残った3つを並べて見ると、自分について別のことも見えてきました。
Claude Code、ChatGPT、higgsfield——コーディング、壁打ち・構成、動画。
Web制作17年やってきた人間の手元に残ったツールが、これなんです。
「Web制作」という看板で動いていたはずなのに、いま実際に手を動かしているのは、コンテンツ制作と動画と、ちょっとのコーディング、というフローになっていました。
Web制作17年だった自分の現在のフローはコンテンツ制作+動画+コーディング
正直に書くと、これに気づいたときちょっと寂しかったです。
10年前の自分なら、たぶん残ったツールはPhotoshop系・Illustrator系・コーディング系の3つだったはずです。
今残っているのは、文章を整えるツール、動画素材を生むツール、コードを生むツール。
自分の仕事の重心が、いつの間にか移っていたということでした。
良い悪いの話じゃありません。
ただ、ツールを並べただけで、自分の現在地がここまで明確になるとは思っていなかった。
残ったツールを見ると自分のフローが何に変わっているか分かる
これ、たぶん読んでいるあなたにも同じことが言えます。
自分のサブスクのリストを並べて、本当に毎週使っているものだけを残してみてください。
残った3つ〜5つを見ると、今のあなたの仕事の重心が、看板や肩書きとは別の場所にあることに気づくかもしれません。
「私はWebデザイナーです」と言いながら、残っているツールが文章系と動画系だったら、もう仕事の中心は別のところに移っている可能性があります。
逆に、「最近何やってるか自分でも分からない」と思っていても、残ったツールを見ると、ちゃんと自分が向き合っているテーマが浮かんできます。
ツールを減らす作業は、副産物として、自分の現在地を見るレントゲンになります。
今日できる最小ワーク — 自分の仕事を一枚の図に

ここからは、今日その場でできる最小ワークです。完成度は気にしなくて大丈夫です。
あえて書いておきますが、いきなり完璧な図にしようとすると、たぶん途中で止まります。
むしろ私自身が業務自動化で『完成』を目指すのをやめたら続いた話を書いたくらい、「ちゃんとやろう」が一番の敵だと体感しています。
AIツール 使い分けを「自分専用カオスマップ」一枚で描く方法
やることは2ステップだけです。
ステップ1:今ブックマークと月額サブスクに入っているAIツールを、紙でもNotionでも、一枚に全部書き出す。
絶対に省略しないでください。
「これは無料だからカウント外」とか「これは試しただけだから」とか言わずに、全部書く。ここで多くの人が「あれ、こんなにあったっけ」と気づきます。
私は最初に書き出したとき、26個ありました。AIツールの使い分けに困っていたわりに、実数を数えたのは初めてでした。
世の中には「AIツール カオスマップ」と検索すると業界全体の俯瞰図が出てきますが、本当に効くのは自分専用のカオスマップ——自分の制作フローに最適化された一枚です。
ステップ2:あなたの仕事を3〜5工程に分ける。
例えば私の場合、ざっくり書き出すとこうなります。
- 企画・構成
- 文章執筆
- コーディング
- 動画素材
- 公開・運用
3個でも5個でも構いません。
あなたの「だいたい毎週やっていること」を粒度大きめで並べてみるだけです。
そして、ステップ1で書き出したツールを、ステップ2の工程の横に置いていく。
「このツールは公開・運用工程」「これは企画・構成」みたいに振り分けていきます。
置き場所が思い浮かばないものをチェック(=削除候補)
ここで起きることが一つあります。
「置き場所が思い浮かばないツール」が必ず出てきます。
そのツールは、削除候補です。
すぐに解約しなくていいです。
ただ印をつけておく。
1ヶ月後、それでも置き場所が思い浮かばなかったら、そのときに解約すればいい。
私の場合、26個のうち15個に印がついて、そのうち12個が3ヶ月以内に消えました。
逆に、一つの工程に3個も4個もツールがぶら下がっている場合は、機能の重複が起きています。
これも整理候補です。
私はChatGPTとClaudeとGeminiを全部「壁打ち」工程に置こうとしていた時期があって、結局ChatGPTだけ残しました。
理由は単純で、3つを比べる時間で本来の壁打ちが進まなかったからです。
ここまでで、おそらくあなたの手元にも、自分専用のAIツールカオスマップの輪郭が見えてきているはずです。
これだけでも、AIツールの使い分けの判断軸はずいぶんクリアになるはず。
ここから先、もう一段解像度を上げる方法については、最後の章で書きます。
完全な配置図フレームワークと Notionテンプレ

8工程に分けるところまで来ると、たぶん次に思うことがあります。
「で、残った3〜5個は、本当に最適配置なんだっけ?」
ここに正直、私もハマりました。
8工程に分解して安心したものの、実は「同じ工程の中で、上流に置くべきか下流に置くべきか」「どのタイミングで使うか」までは見えていない。
並べただけだと、まだ動かない地図でした。
8工程の次は「4象限カオスマップ」
そこからもう一段先に進めたのが、4象限カオスマップでした。
「使用頻度(毎日/週次)」と「コア度(自分の差別化に効く/効かない)」の2軸で、ツールを実際に配置していく。
これをやると、
- 「毎日使ってるけど、別にコア差別化じゃないツール」(=外注/自動化候補)
- 「週次なのに、ものすごくコアなツール」(=もっと頻度上げるべき)
- 「コアじゃないし頻度も低いのに残ってるツール」(=今すぐ解約)
みたいに、行動が明確に分かれます。
8工程のカオスマップだけでは判断できなかった「で、どうする?」のところに、答えが返ってくるようになりました。
4象限まで描けると、AIツールの使い分けがツール単位ではなく「役割単位」で見えるようになります。
ここまでの設計と、それをNotion上で運用するためのテンプレート(30分で完成する自分専用カオスマップのワークシート)は、ブログ記事に全部書くと長くなりすぎる&個別の制作OSとして組み上げる手順が必要なので、別記事として有料noteにまとめました。
→ AIツール、散らかってませんか?——15個から3つに絞れた『制作OS』設計図(4象限フレーム+Notionテンプレ #01)(¥980)
8工程のカオスマップだけでも十分に効きます。
それで足りる人は、無料の最小ワークだけで大丈夫です。
「もう一段、自分の制作OSとして組み上げたい」「Notionで運用に乗せたい」という人だけ、覗いてみてください。
最後に正直なところを書きます。
私はこの記事を「AIツールの使い分けを完璧にできる賢い人が書く記事」として書いたつもりはありません。
むしろ12個ぶんのサブスク代を払って、ようやく自分のカオスマップがなかったことに気づいた、という話のつもりで書いています。
同じ穴の中にいる仲間として、もし「あ、自分のことだ」と思ったところが一行でもあったなら、それで十分この記事の役目は果たせています。
AIツール 使い分けは、結局「正解の組み合わせ」を見つける話じゃなく、自分の地図を一枚描く話でした。
明細を見て固まる月末を、もう少しだけ減らしていけたら、お互いいいですね。
