なぜ個人開発は「正解探し」で止まるのか

「何から作ればいいか分からない」「これで合っているのか不安」——個人開発でそんな壁にぶつかっていませんか?
個人開発を始めると、すぐに「決めなければいけないこと」の山に直面します。
要件定義、設計、UI、機能構成。
どれも「正しい答え」を出さなければ先に進めない気がして、手が止まってしまいます。
私自身、完璧な要件定義をしようとして疲弊し、作り込んでから「違う」と感じて全部壊し、リリース前に不安になって公開できない——そんな失敗を何度も繰り返してきました。
完璧な設計を求めすぎる罠
「最初にしっかり設計しておけば、後で困らない」。
これは一見正しいように聞こえます。しかし個人開発では、作ってみないと分からないことが多すぎます。
ユーザーの反応、自分の技術的な限界、時間の制約。
すべてを最初から見通すことは不可能です。それでも「正しい設計をしなければ」と考えるほど、最初の一歩が踏み出せなくなります。
「正解は最初から決まっている」という誤解
多くの開発者が無意識に持っている前提があります。
「どこかに正解があって、それを見つけなければいけない」という考え方です。
しかし実際には、正解は最初から存在しません。
正解は、作りながら、使われながら、少しずつ育っていくものです。
Design Thinkingが個人開発に向いている理由
Design Thinkingは、正解が分からない状態を前提に進むためのフレームワークです。
これが個人開発と相性がいい理由は明確です。
「正解を育てる」という前提
Design Thinkingでは、最初から正解を出そうとしません。
仮説を立て、小さく試し、フィードバックを得て、また仮説を更新する。
このサイクルを繰り返すことで、正解を「育てて」いきます。
迷いを許容するプロセス設計
「迷っている」ことは悪いことではありません。
Design Thinkingでは、迷いはプロセスの一部として設計されています。
だから「これでいいのか分からない」という状態でも、次にやるべきことが見えます。
「正解を育てる」5ステップを開発に当てはめる

Design Thinkingの5ステップを、個人開発のプロセスとして整理します。
Step 1: 共感 — ユーザーの痛みを自分ごとにする
最初のステップは、ユーザーが何に困っているかを深く理解することです。
単に「こんな機能があったら便利だろう」と想像するのではなく、実際の痛みを感じ取ることが重要です。
自分自身がユーザーになれる場合は、その痛みを言語化してみてください。
他の人向けのプロダクトなら、話を聞いたり、行動を観察したりします。
共感のステップについては共感とは「分かる」ではなく「感じる」ことで詳しく解説しています。
Step 2: 定義 — 問いを仮説として立てる
共感から得た情報をもとに、「解くべき問い」を定義します。ここで重要なのは、問いを「確定した正解」ではなく「検証すべき仮説」として扱うことです。
「〇〇という課題を、△△で解決できるのではないか」という形式で書くと、後で検証しやすくなります。
具体的な方法は問いを仮説として立てる方法を参考にしてください。
Step 3: 発想 — 正解を探さず選択肢を広げる
問いが定まったら、解決策のアイデアを出します。
このとき、最初から「正解」を探そうとしないことが大切です。
まずは選択肢を広げることに集中します。
「これは無理だろう」「これは違う」と判断するのは後回しにして、とにかく数を出す。
発想の具体的なコツは正解を探さない発想法で説明しています。
Step 4: 試作 — 完成ではなく検証のために作る
アイデアを選んだら、試作を作ります。
ここでのポイントは、「完成品を作る」のではなく「検証するために作る」という意識です。
UIは仮のままでいい。機能は最小限でいい。
大事なのは、仮説を検証するための判断材料を得ることです。
試作の考え方については試作の目的は完成ではないも合わせて読んでみてください。
Step 5: 検証 — フィードバックで正解を育てる
試作を実際に使ってもらい、フィードバックを得ます。
ここで得た情報をもとに、仮説を更新し、次のサイクルに進みます。
リリースはゴールではなく、検証の始まりです。
フィードバックを受け入れ、正解を育てていく姿勢が重要です。
検証の詳細はフィードバックを成長に変える検証の考え方をご覧ください。
開発が軽くなる理由
このプロセスを取り入れると、開発に対する心理的な負担が大きく減ります。
「間違えてもいい」という安心感
正解を育てる前提で進めると、「間違えること」が怖くなくなります。
間違いは失敗ではなく、正解に近づくための情報です。
手戻りがプロセスの一部になる
従来の開発では、手戻りは「失敗」として捉えられがちです。
しかしこのプロセスでは、手戻りは最初から織り込み済みです。
だから「やり直し」にストレスを感じなくなります。
次のプロジェクトで試せる最小ステップ

いきなりすべてを変える必要はありません。
次のプロジェクトで、小さく試してみてください。
今日からできる3つのアクション
- 仕様書を書く前に「誰の何をまだ分かっていないか」を書く — 共感のステップを意識するだけで、作るべきものの解像度が上がります。
- 検証用の仮実装を作る — 完成品ではなく、「これで判断できる」最小限のものを作ってみてください。1画面、1機能で十分です。
- リリースを検証の始まりと捉える — 公開することがゴールではなく、フィードバックを得るスタートだと考えると、公開のハードルが下がります。
正解は最初から決まっていません。
正解は、作りながら、使われながら、育てていくものです。
迷いながらでも前に進めるようになると、開発はもっと楽しくなります。
参考になれば幸いです。

