運動しても血糖値が下がらない5つの理由|見直すべきは「量」より「組み合わせ」

運動しているのに、数値が動かない

「週3回ジムに通っている」「毎朝ウォーキングしている」「それなのに血糖値もHbA1cも変わらない」。

そんな経験はありませんか。

運動は健康によい。

それは間違いありません。

でも、「運動すれば数値は下がる」という単純な公式は、必ずしも成り立たないことがあります。

私自身、CGM(持続血糖測定器)をつけて運動と血糖値の関係を観察してきました。

そこで気づいたのは、数値は「良い・悪い」の判断材料ではなく、体の反応を知るための視点だということです。

運動しても数値が改善しないとき、見直すべきは「量」や「頑張り」ではなく、組み合わせかもしれません。

運動は万能薬ではない

運動が血糖コントロールに効果的であることは、多くの研究で示されています。

筋肉を動かすとブドウ糖が取り込まれ、インスリン感受性も高まると考えられています。

ただし、これは「どんな運動でも、いつやっても、同じ効果がある」という意味ではありません。

種類、タイミング、強度、そして回復のバランスによって、体の反応は大きく変わります。

努力が足りないのではなく、組み合わせがズレているだけ。

その視点で、5つの原因を見ていきます。

原因1:運動の種類が数値と合っていない

有酸素運動と筋トレでは、血糖値への影響が異なります。

有酸素運動は運動中のブドウ糖消費を促し、筋トレは筋肉量を増やすことで長期的なインスリン感受性の向上が期待されています。

「有酸素運動だけ」「筋トレだけ」という偏りがあると、効果が限定的になることがあります。

また、同じ運動を長期間続けていると、体が慣れてしまい反応が鈍くなることも。

自分の数値のパターンを見ながら、種類を組み合わせてみるという選択肢があります。

原因2:運動のタイミングがズレている

運動の効果は、いつやるかによっても変わります。

食後の血糖値上昇を抑えたいなら、食後すぐ〜30分以内の軽い運動が効果的という報告があります。

2023年のメタ解析では、食後0〜29分の運動が最も効果的とされています。

一方、空腹時の激しい運動は、肝臓からの糖放出を促し、かえって血糖値が上がることも。

食事のタイミングと血糖値スパイクの関係と同様に、運動にも「いつ」という要素が大切です。

朝の空腹時と夕食後、どちらが自分に合っているか。少し実験してみると発見があるかもしれません。

原因3:強度が高すぎる(または低すぎる)

「しっかり追い込まないと効果がない」と思っていませんか。

実は、高強度の運動はストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を促し、一時的に血糖値を上昇させることがあります。

逆に、強度が低すぎると消費エネルギーが少なく、血糖コントロールへの影響が限定的になることも。

「ややきつい」と感じる中強度の運動が、血糖値の安定には適しているという考え方もあります。

心拍数でいうと、最大心拍数の50〜70%程度が目安とされています。

原因4:回復が足りていない

毎日ストイックに運動を続けることが、必ずしも良い結果につながるわけではありません。

回復が不十分だと、体は常にストレス状態にあり、コルチゾールが高止まりしやすくなります。

睡眠の質と血糖値の意外な関係でも触れましたが、回復の質は血糖コントロールに直結します。

運動の「頻度」だけでなく、休息日をどう設けるかも大切な要素です。

週に1〜2日は意図的に休む。そのほうが、長い目で見ると数値が安定することもあります。

原因5:他のストレスとの重なり

運動自体は体にとって「良いストレス」ですが、仕事や人間関係のストレスと重なると、コルチゾールの総量が増えすぎることがあります。

コルチゾールは血糖値を上昇させる働きがあるため、「運動でストレス発散しているのに数値が下がらない」という逆説的な状況が起こりえます。

ストレスは本当に「悪者」なのかという視点も参考になります。

運動を増やすより、まず他のストレス源を減らすほうが効果的な場合もあります。

見直しのステップ:何から始めればいいか

5つの原因を一度に改善しようとすると、何が効いたのかわからなくなります。おすすめは、1つずつ変えて観察することです。

  1. 現状を記録する:運動の種類、時間、強度をメモする
  2. 1週間に1つだけ変える:例えば「食後に運動してみる」など
  3. 変化を観察する:体感と、可能なら数値も確認する
  4. 効果があれば続ける、なければ次を試す

この繰り返しで、自分に合った組み合わせが少しずつ見えてきます。

今日からできる1つの調整

すべてを見直す必要はありません。まずは1つだけ。

食後すぐに、10分歩いてみる

これだけでも、血糖値の上昇カーブが穏やかになることがあります。

激しい運動ではなく、散歩程度で十分です。

「運動しているのに変わらない」という悩みは、努力の方向を少し調整するだけで、違う結果につながる可能性があります。ズレているのは努力ではなく、組み合わせ。そう考えると、少し気が楽になりませんか。

参考になれば幸いです。

免責事項
この記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を意図したものではありません。血糖値やHbA1cの管理について医学的な判断が必要な場合は、必ず医師にご相談ください。また、運動を始める際や強度を変える際には、現在の健康状態を考慮し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

参考文献