食後の眠気は「意志力の問題」ではない

昼食後の会議で眠くなる。大事なプレゼンの前なのに、まぶたが重い。
そんな経験をして「自分は意志が弱いのでは」と感じたことはないでしょうか。
私も長い間、食後の眠気を「集中力の欠如」や「気合いの問題」として捉えていました。
でも、体の仕組みを少し知ってからは、その見方が変わりました。
血糖値スパイクという視点を知る

「血糖値スパイク」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
食事の後に血糖値が急上昇し、その後急降下する現象のことです。
この視点は、食後の眠気を「説明する選択肢の一つ」として役立ちます。
もちろん、眠気の原因は人それぞれで、血糖値だけが理由ではないかもしれません。
でも、「体の反応として起きている可能性がある」と知るだけで、自分を責める気持ちが少し軽くなることがあります。
なぜ眠くなるのか:体の仕組みを理解する
私たちの脳には、覚醒を維持するオレキシンという物質を出す神経細胞があります。
研究によると、このオレキシンニューロンは血糖値の変化を感知していて、血糖値が高くなると覚醒を促す働きが抑えられることがわかっています。
つまり、食後に眠くなるのは、脳が血糖値の上昇に反応している可能性があるということ。
「気合いが足りない」のではなく、体が正直に反応しているだけかもしれないのです。
この視点を持つと、数値を情報として受け取る考え方が食後の眠気にも応用できることに気づきます。
眠気も一つの「体からの情報」として捉えることができます。
試してみたい5つのアプローチ

ここからは、食後の眠気が気になる方が試せる選択肢を5つ紹介します。
どれが合うかは人それぞれなので、「これをやるべき」というよりは、「こんな方法もあるんだ」くらいの気持ちで読んでいただければと思います。
1. 食べる順番を変えてみる
「野菜ファースト」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
野菜を先に食べてから炭水化物を食べると、血糖値の上がり方が緩やかになるという研究があります。
2014年の研究では、この食べ方を続けた糖尿病患者のHbA1c(血糖コントロールの指標)が2.5年で8.6%から7.5%に改善したと報告されています。
これは糖尿病の方を対象にした研究ですが、食後の血糖値の急上昇を抑えたい場合のヒントにはなりそうです。
実践するなら、まずはサラダや野菜の副菜から食べ始めて、ご飯やパンは後半に回してみる、という程度から試してみてもいいかもしれません。
2. 食事のペースを意識する
早食いが血糖値の急上昇につながりやすいという話を聞いたことがある方もいるでしょう。
北海道大学の研究では、朝食時に40回咀嚼することで、インスリンの初期分泌が48%増加したという結果が出ています。
よく噛むことで、体が食事に対して「準備万端」の状態で臨めるようになる、というイメージでしょうか。
忙しい日々の中で毎回40回噛むのは現実的ではないかもしれませんが、「いつもより少しゆっくり」を意識するだけでも違いがあるかもしれません。
3. 食後に少し歩いてみる
食後の散歩が血糖値に良いという話は、わりと知られているかもしれません。
2016年のDiabetologia誌に掲載された研究では、毎食後に10分間歩くことで、夕食後の血糖応答が22%改善したと報告されています。
10分の散歩というのは、オフィスならコーヒーを取りに行くついでに少し遠回りする、在宅なら近所を一周するくらいの距離感です。「運動しなきゃ」と構えるよりは、「ちょっと外の空気を吸ってくる」くらいの気軽さで取り入れられるかもしれません。
体の反応を信号として捉える視点で考えると、眠気を感じたら「体を少し動かすタイミングかも」と解釈することもできそうです。
4. 食事の組み合わせを工夫する
炭水化物だけの食事より、食物繊維やタンパク質と組み合わせた方が血糖値の上昇が緩やかになりやすいと言われています。2022年の研究レビューでは、水溶性食物繊維がGLP-1というホルモンの分泌を促し、血糖上昇を緩やかにする働きがあることが示されています。
具体的には、おにぎりだけのランチより、サラダやゆで卵を一緒に食べる。
パスタを食べるなら、野菜たっぷりのソースを選ぶ。そんな小さな工夫から始められます。
ただ、これも「絶対にこうしなければ」というルールではありません。
忙しい日や、どうしてもラーメンが食べたい日もあるでしょう。そういう日は、それでいいのだと思います。
5. 食事のタイミングを見直す
食事の時間帯や間隔も、血糖値の変動に影響することがあります。
例えば、朝食を抜いて昼に大量に食べると、血糖値が急上昇しやすくなる可能性があります。
睡眠と血糖値の関係でも触れていますが、私たちの体にはリズムがあって、食事のタイミングもそのリズムに影響を与えます。
自分の生活パターンの中で、食事の間隔が極端に空いていないか、一度振り返ってみるのも一つの方法です。
「正解」を探すより「試す」という姿勢で

ここまで5つのアプローチを紹介しましたが、どれが自分に合うかは、実際に試してみないとわかりません。
そして、すべてを完璧にやろうとする必要もありません。
すべてを変えようとしなくていいという考え方は、食後の眠気対策にも当てはまります。
「野菜ファーストと食後の散歩と咀嚼を毎日完璧に」と意気込むよりも、「今週は食べる順番だけ意識してみよう」くらいの方が、続けやすいのではないでしょうか。
私自身も、すべてを毎日実践しているわけではありません。
時間がある日は食後に散歩をするし、忙しい日は野菜から食べることだけ意識する、というくらいの緩さでやっています。
まとめ:体の反応を情報として受け取る

食後の眠気は、意志力の問題ではなく、体の自然な反応として起きている可能性があります。
血糖値スパイクという視点を知ることで、「なぜ眠くなるのか」の説明の選択肢が一つ増えます。
試せるアプローチとしては:
- 野菜から食べ始めてみる
- 食事のペースを少しゆっくりにする
- 食後に10分ほど歩いてみる
- 炭水化物だけでなく、食物繊維やタンパク質も一緒に摂る
- 食事の間隔を見直してみる
どれも「絶対にやるべきルール」ではなく、「試してみて、自分に合えば続ける」くらいの気持ちで取り入れてみてください。
大切なのは、自分を責めるのではなく、体からの情報として眠気を受け取り、自分に合った方法を見つけていくことだと思います。
どなたかの参考になれば幸いです。
この記事は個人の経験と考え方を共有するものであり、医療アドバイスではありません。
健康診断の結果について気になることがある場合は、医師にご相談ください。
参考文献
- PMC (2013) “The physiological role of orexin/hypocretin neurons in the regulation of sleep/wakefulness“
- Imai S, et al. (2014) “Effect of eating vegetables before carbohydrates on glucose excursions“
- Reynolds AN, et al. (2016) “Advice to walk after meals is more effective for lowering postprandial glycaemia“
- 北海道大学 (2019) “咀嚼による血糖値の調節効果は朝と夜で異なることを発見“
- PMC (2022) “The Effects of Soluble Dietary Fibers on Glycemic Response“
