昨日と同じ朝食なのに、今日は血糖値が高い
いつもと同じトーストとコーヒー。
量も食べ方も変えていない。
なのに、CGMを見ると今日の食後血糖値は昨日より明らかに高い——。
そんな経験をしたことはありませんか?
「何か変なものを食べたかな」「測定の誤差かな」と思うかもしれません。
でも、ふと昨夜のことを振り返ってみてください。
いつもより遅くまで起きていた、なかなか寝付けなかった、途中で何度も目が覚めた……そんなことはなかったでしょうか。
実は、睡眠と血糖値には、食事とはまた別の深いつながりがあります。
睡眠不足が血糖コントロールに影響するメカニズム

睡眠が不足すると、体の中ではいくつかの変化が起きています。
コルチゾールの分泌パターンの変化
コルチゾールは「ストレスホルモン」として知られていますが、本来は朝に分泌量が増え、夜に向かって減少するという日内リズムを持っています。
このリズムが、私たちの活動と休息のサイクルを支えています。
睡眠が不足すると、このリズムが乱れやすくなります。
本来なら低下しているはずの時間帯にもコルチゾールが高めに推移することがあり、これが血糖値の調整に影響を与えることがあります。
コルチゾールの働きについては、ストレスは本当に「悪者」なのか?で詳しく触れていますが、コルチゾール自体は体に必要なホルモンです。
ただ、分泌のタイミングやバランスが変わると、血糖値の動きにも変化が現れることがあるのです。
インスリン感受性の変化
もうひとつ注目されているのが、インスリン感受性への影響です。
インスリンは血糖値を調整するホルモンですが、睡眠が不足すると、細胞がインスリンに対して反応しにくくなる傾向が報告されています。
ある研究では、睡眠を制限した場合にインスリン感受性が16〜32%程度低下したというデータもあります。
これは、同じ食事を摂っても、睡眠状態によって血糖値の上がり方が変わりうることを示唆しています。
食欲に関わるホルモンへの影響
睡眠不足は、食欲を調整するホルモンにも影響を与えることが知られています。
満腹感を伝えるレプチンが減少し、空腹感を促すグレリンが増加する——そんな変化が、睡眠不足の状態で観察されています。
研究によっては、レプチンが18%減少、グレリンが28%増加したという報告もあります。
さらに興味深いのは、炭水化物への食欲が33%程度高まったというデータもあることです。
「寝不足の日は甘いものが食べたくなる」という感覚には、こうした背景があるのかもしれません。
データで見えてくる「睡眠と翌日の血糖値」のパターン

CGMやウェアラブルデバイスを使っていると、こうした変化を自分のデータの中に見つけられることがあります。
たとえば、睡眠時間が短かった日の翌朝。
いつもと同じ朝食でも、食後のピークが少し高めに出たり、ベースラインに戻るまでの時間が長かったり。
あるいは、夕食の時間との関係。遅い時間(たとえば22時頃)の夕食は、早い時間(18時頃)に比べて食後血糖が高くなりやすいという研究もあります。
約18%の差があったというデータも報告されています。
こうしたパターンは、一日だけ見ていると「たまたま」に見えます。
でも、点ではなく「流れ」で見るように、数日〜数週間のデータを眺めてみると、「睡眠が短かった翌日は、食後の血糖値が高めに出やすい」といった自分なりの傾向が浮かび上がってくることがあります。
血糖値から睡眠への影響——双方向の関係

ここまでは「睡眠→血糖値」の方向の話でしたが、実は逆方向の関係も注目されています。
血糖値の変動が大きい日は、その夜の入眠に時間がかかる傾向があるという研究報告があります。
血糖値の上下動が激しいと、体が落ち着かず、眠りにつきにくくなる可能性が考えられています。
また、夜間の低血糖が睡眠を妨げるケースも知られています。
睡眠中に血糖値が下がりすぎると、体がそれを調整しようとして目が覚めてしまうことがあるのです。
つまり、睡眠と血糖値は一方通行ではなく、お互いに影響し合う双方向の関係にあると考えられています。
正常範囲でも違和感があるとき、どう捉えるかでも触れていますが、数値が「正常」でも、パターンや変動の仕方によって体感が違うことがあります。
睡眠の質と血糖値の変動は、そうした「数値だけでは見えにくいつながり」のひとつかもしれません。
自分のパターンを観察するためのヒント

では、こうした関係を自分のデータの中で見つけるには、どうすればいいでしょうか。
まずは「記録をつなげる」ことから
CGMのデータと睡眠のデータ(睡眠時間、就寝・起床時刻、睡眠の質の自己評価など)を、同じタイムラインで眺められるようにしてみてください。
別々のアプリで記録している場合でも、日付をキーにして見比べるだけで、意外なつながりが見えてくることがあります。
「いつもと違う日」に注目する
毎日のデータを細かく分析する必要はありません。
むしろ、「あれ、今日はいつもと違うな」と感じたときに、前夜の睡眠を振り返ってみる。そのくらいの軽さで十分です。
- 睡眠時間はどうだったか
- 就寝時刻はいつもより遅くなかったか
- 夜中に目が覚めなかったか
- 夕食の時間は遅くなかったか
こうした要素と、翌日の血糖値の動きを照らし合わせてみると、自分なりの傾向が見えてくることがあります。
「正解」を探さない
大切なのは、「睡眠が短いと血糖値が上がる。だから睡眠を増やさなければ」と結論を急がないことです。
睡眠時間を十分に確保できない日もあります。
仕事や育児、さまざまな事情で難しいときもあるでしょう。
それを「失敗」と捉える必要はありません。
健康データは「判断」ではなく「視点」として見るという考え方が、ここでも役立ちます。
「睡眠が短かった日は、血糖値が高めに出やすいんだな」という気づきがあれば、それだけで十分です。
その気づきがあることで、「今日は睡眠不足だから、いつもより軽めの朝食にしてみよう」とか、「食後に少し歩いてみよう」といった、柔軟な対応ができるようになるかもしれません。
まとめ
睡眠と血糖値の関係は、食事や運動ほど直感的ではないかもしれません。
でも、データを通じて眺めてみると、意外なつながりが見えてくることがあります。
- 睡眠不足はインスリン感受性やホルモンバランスに影響を与え、血糖値の動きに変化をもたらすことがある
- 逆に、血糖値の変動が睡眠の質に影響することもある
- この双方向の関係を知っておくと、自分のデータを見る視点が広がる
「昨日と同じ食事なのに、今日は血糖値が違う」——その背景には、食事以外の要素が関わっているかもしれません。
睡眠は、そのひとつの切り口です。
自分のデータを、少し広い視点で眺めてみる。そこから、新しい気づきが生まれるかもしれません。
この記事は個人の経験と考え方を共有するものであり、医療アドバイスではありません。
健康上の懸念がある場合は、医師にご相談ください。
参考文献
- NCBI (2021) “Impact of Sleep and Circadian Disturbances on Glucose Metabolism and Type 2 Diabetes”
- PMC (2020) “Metabolic Effects of Late Dinner in Healthy Volunteers—A Randomized Crossover Clinical Trial”
- PMC (2016) “Sleep Duration and Diabetes Risk: Population Trends and Potential Mechanisms”
- PMC (2023) “Associations between glycemic variability, sleep quality, and daily steps”

