作っても作ってもイマイチだった。
Photoshopを開いて、SketchやXDを触って、Dribbbleで見たかっこいいUIを真似して。
でも出来上がるのは、なんか違うもの。
何が違うのかすらわからない。「自分にはセンスがないんだ」と、本気でそう思っていました。
Web制作を17年やってきて、ようやくわかったことがあります。
あの頃の自分に足りなかったのは、センスじゃなかった。
判断基準です。
この記事では、デザイン初心者が何から始めるべきかを、僕自身の遠回りの経験から書いていきます。
結論を先に言うと、理論を暗記することでもツールを覚えることでもありません。
作っても作ってもイマイチだった頃の話

デザインを始めたのは20代後半でした。当時はPhotoshop cs2からcs3の時代。
レイヤーの概念を覚えて、グラデーションを引いて、ドロップシャドウをかけて。
「それっぽいもの」を量産していました。
でも、どれも似たようなダサさがある。
フォントは3種類も4種類も使っていました。余白が怖くて、空いたスペースには何かを入れないと不安だった。配色はビビッドな原色を平気で並べていた。今見返すと、目がチカチカするようなバナーばかりです。
当時の僕がやっていたのは「作る」ことだけでした。
とにかく手を動かせば上手くなると信じていた。
書道の練習帳みたいに、数をこなせばいつかマシになるだろう、と。
3年経っても、大して変わりませんでした。
デザイン初心者が最初にやりがちな3つの遠回り

振り返ると、僕が通ってきた遠回りは大きく3つありました。
そしてこれは、ネットで「デザイン 初心者 何から始める」と検索して出てくる上位記事が、まさに推奨していることでもあります。
1. まず理論を覚えようとする
近接・整列・反復・コントラスト。
ロビン・ウィリアムズの『ノンデザイナーズ・デザインブック』に書いてある4原則です。
僕もこれを暗記しました。テストなら満点取れます。
でも、自分のデザインに適用できなかった。
「近接ってことは、関連する要素を近づければいいんだよね?」と頭ではわかっている。
でも実際の画面で、どの要素をどれくらい近づけるかの判断ができない。
知識は増えたけど、判断力は1ミリも増えていませんでした。
2. まずツールを覚えようとする
次に手を出したのがツール操作です。
Photoshopのショートカットを覚え、Illustratorのペンツールを練習し、後にはXDやSketchのコンポーネント設計まで学びました。
操作はどんどん速くなった。
ただし、イマイチなデザインを高速で作れるようになっただけです。
バイブコーディングで挫折した3ヶ月の体験談でも書きましたが、ツールを使えることと、良いものを作れることは別物です。
AIでサイトを作れるようになった今、この問題はさらに顕著になっています。
3. とにかく作って覚えようとする
「習うより慣れろ」式のアプローチ。
毎週バナーを1枚作る、LP模写を週末にやる。
手は確かに動くようになります。
でもフィードバックなしの練習って、効率が悪い。
自分のデザインの何が悪いかわからないまま量をこなしても、悪い癖が定着するだけでした。
センスがないのではなく、基準を知らないだけだった

転機は、あるWebデザイナーの先輩に言われた一言でした。
「お前、良いサイト見てる?」
見てなかった。
作ることばかりで、見ることをしていなかった。
そこから意識的に良いデザインを観察するようになって、初めて気づいたことがあります。
プロのデザインには、理由がある。余白が広いのには理由がある。
フォントが2種類なのには理由がある。
配色が3色に絞られているのには理由がある。
ぶっちゃけ、センスなんてものは存在しません。
水野学さんの言葉を借りれば、センスとは「数値化できない事象のよし悪しを判断し、最適化する能力」。
つまり判断基準の集合体です。
生まれつきの才能じゃない。
僕がイマイチなデザインを作り続けていたのは、センスがなかったからじゃなく、比率・階層・余白・コントラストという基準を持っていなかったから。
基準がないから、目の前のデザインが良いのか悪いのか、判定できなかっただけです。
この気づきが、デザインの見え方を根本から変えました。
デザイン初心者が何から始めるべきか — 「見る力」の鍛え方

じゃあ、具体的に何をすればいいのか。
答えはシンプルです。1日1サイト、良いと思ったデザインを「なぜ良いのか」3行で書く。
これだけです。
5分-10分で終わります。
やり方を書きます。
- デザインギャラリーサイト(Awwwards、Dribbble、MUUUUU.ORG など)から1つ選ぶ
- 3分間、じっくり見る。まずは直感で「良い」「普通」「微妙」を感じる
- なぜそう感じたかを3つ書く(例:「余白が広くて視線が迷わない」「フォントが2種類で統一感がある」「アクセントカラーがCTAボタンだけに使われている」)
- NotionでもObsidianでもメモ帳でもいい。記録する
これを2週間続けると、自分のデザインを見る目が変わり始めます。
VTS(Visual Thinking Strategies)という観察トレーニングの研究では、意識的に「見る→言語化する」練習を繰り返した人は、対照群より多くの観察ポイントを見つけられるようになったという結果が出ています。
反復回数が増えるほど効果が高まる。
毎日5分を2週間。
14回。十分です。
僕自身、このトレーニングを始めてから2ヶ月で、自分の過去のデザインの「何がイマイチなのか」をようやく言語化できるようになりました。
余白が均一じゃなかったこと。
フォントサイズの階層がなかったこと。
コントラスト比が足りなくて文字が読みにくかったこと。
言語化できるようになると、直せるようになります。
「何から始めればいいかわからない」を解消する言語化メソッドでも触れていますが、言語化は行動の出発点です。
もう少し踏み込みたくなったら、自分のデザインとプロのデザインを並べて「違いを5つ書く」もおすすめです。
僕がFigmaでDribbbleの作品を模写したとき、自分が思っていた余白とプロの余白が2倍以上違って衝撃を受けました。この「差分に気づく力」が、判断基準の原型になります。
AI時代のデザイン学習 — ツールの前に判断基準を持つ

ここまで読んで「でも今はAIがデザインしてくれるんでしょ?」と思った方もいるかもしれません。
半分正解で、半分不正解です。
Figmaの調査によると、92%のビジネスリーダーが非デザイン職にもデザインスキルを期待しています。
AIで作業速度は上がった。89%のデザイナーがそう回答しています。
でも品質向上を実感しているのは58%にとどまります。
Nielsen Norman Groupの調査はもっと端的です。AIはデザインの大枠は出せる。
でもニュアンス・品質・磨き込みの「最後の部分」は人間の判断に委ねられている、と。
正直、これは僕も実感しています。Claude Code × Pencilで「AIデザインの隙間」を埋める実体験で書きましたが、AIが出してくるUIには独特の「無菌的な質感」がある。
技術的には正しいけど、どのビジネスにもフィットしないデザイン。
均質で、個性がない。
AIが生成したデザインを「これでいいのか?」「ここを直すべきか?」と判断するのは、結局あなた自身です。
その判断に必要なのが、ここまで話してきた「見る力」であり「判断基準」です。
AI時代に17年デザイナーが語る生き残り戦略でも書きましたが、AIが進化するほど、人間に求められるのは「作る力」ではなく「判断する力」になっていきます。
だからこそ、デザイン初心者が最初にやるべきことは、ツールの操作でもAIの使い方でもなく、「良いデザインとは何かを自分で判定できる目」を育てることです。
その目が育ったら、Figma AIの使い方 — 操作より先に知るべき判断基準を読んでみてください。
ツールの使い方が全然違って見えるはずです。
もし「AIデザインツールを使ってみたけど、なんか使えない」と感じたことがあるなら、Figma AIが「使えない」と感じたらも参考になります。
まとめ:最初の一歩は「良いデザインを言語化する」こと

デザイン初心者が何から始めるべきか。
理論でもツールでも、ましてや「センスを磨く」でもありません。
良いデザインを見て、なぜ良いのかを言語化する練習です。
今日からやれることは1つだけ。
好きなサイトを1つ開いて、「なぜこのデザインが良いと感じるのか」を3行書いてみてください。
余白、フォント、配色、コントラスト、階層。何でもいい。言葉にしてみる。
それがデザインの判断基準を持つ最初の一歩です。
ツール操作を学ぶのは、その後で十分です。判断基準ができてからツールを触ると、学習効率がまるで違います。
次のステップとしてFigmaコンポーネント設計の実践ガイドも参考にしてみてください。
どなたかの参考になれば幸いです。
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