Figma AIで生成したデザイン、「悪くないけど、なんか違う」と感じたことはありませんか。
そのモヤモヤ、原因はFigma AIの精度でもバグでもありません。
あなた自身に、AI生成物を評価する判断基準がないだけです。
この記事では、デザイン実装歴17年の視点から、Figma AIが「使える」に変わるための5つの評価軸を解説します。
「悪くないけど、なんか違う」が止まらなかった日

深夜2時。
Figma AIにプロンプトを入れて、出てきたUIを眺めていました。
レイアウトは崩れていない。
色もまあまあ。ボタンもある。
でも、なんか違う。
「もうちょっと余白を……いや、フォントかな……色を変えてみるか……」
プロンプトを書き換えて再生成。
また微妙に違う。手動で直してみる。
さらに迷子になる。
気づいたら3時間経っていて、最初のバージョンとほぼ変わらないものが画面に残っていました。
この「なんとなくやり直す」ループ、身に覚えがありませんか。
正直に告白します。
17年デザインをやってきた自分でも、Figma AIを最初に触ったときは同じ状態でした。
出力が「ダメ」なのはわかる。
でも「どこがダメなのか」を言葉にできない。
だから手の打ちようがない。
バイブコーディングで挫折した体験でも同じ壁にぶつかりました。
コードもデザインも、AIが出したものを「評価できない」とき、人は迷走します。
Figma AIが「使えない」と感じる3つの表面的な原因

「figma ai 使えない」で検索すると、だいたい3パターンの原因が出てきます。
1. 設定・プランの問題
ドラフトファイル(チーム未所属)だとAI機能が表示されない。
有料プランが必要。管理者がAI機能を有効化していない。
これはFigmaフォーラムでも頻出する質問です。
2. 精度の不安定さ
同じプロンプトでもレイアウトや配色がランダムに変わります。
日本語UIの精度が低い。
First Draftでは1プロンプトにつき1画面しか生成できず、再利用可能なコンポーネントも作れません。
3. ベータ機能のリスク
2024年7月にはFigma AIの「Make Design」機能がApple Weatherアプリとほぼ同じデザインを生成し、CEO自らが機能を停止した事件がありました。
ユーザーフォーラムでも「以前より品質が落ちた」という報告が上がっています。
これらは事実です。
否定しません。
でも、ここで立ち止まってほしい。
仮にこれらが全部解決したとして――設定は完璧、プランは最上位、精度も100%安定――あなたの「なんか違う」は消えますか?
消えないはずです。
なぜなら問題の所在がそこじゃないから。
本当の原因はツールじゃない — 判断基準がないだけだった

Figmaの2025年AIレポートに、象徴的なデータがあります。
デザイナーの78%がAIで「効率が上がった」と回答。一方、「品質が向上した」と感じているのは40%のみ。
この38ポイントの差こそ、「使えない」の正体です。
AIは速い。
叩き台を出すのは一瞬です。
でも「速くなった」と「良くなった」は違います。
速く作れても、出てきたものが良いのか悪いのか判断できなければ、結局は使えません。
ぶっちゃけ、Figma AIが使えないんじゃないんですよ。
AI生成物をレビューするスキルがないだけです。
冒頭の「なんとなくやり直すループ」を思い出してください。
あれは「何が悪いか分からないから、何を直せばいいかも分からない」状態です。
プロンプトを変えても、色を変えても、フォントを変えても解決しない。
評価する軸がないまま手を動かしているだけだから。
業界でもこの議論が始まっています。
ある分析記事では「AI時代のボトルネックはコーディングではなくテイスト(判断力)だ」と指摘されています。
生成は誰でもできる時代になりました。
でも「これは良い」「これはダメ」「ここを直せば良くなる」を判断できる人が、圧倒的に足りていません。
デザイナーのAI出力への信頼度はわずか32%というデータもあります(開発者は68%)。
デザイナーがAIを信頼できないのは、AIが悪いからではなく、AI出力を正しく評価する基準を持てていないからです。
ここに気づけるかどうかで、Figma AIとの付き合い方が180度変わります。
AI生成デザインを評価する5つの軸

では、具体的にどうやって判断基準を持つのか。
自分が17年のデザイン・実装経験で使っている評価軸を5つに絞りました。この5つをチェックするだけで、「なんか違う」を言語化できるようになります。
軸1:余白(ホワイトスペース)
AI生成デザインで最も崩れやすいポイントです。
AIは余白を均一に詰めがちです。
全体的に「ぎゅっと」しているか、逆にすべてが同じ間隔で並んでいる。
意図的な疎密のコントロールができていません。
チェックポイント:
- 関連する要素同士は近く、無関係な要素は離れているか
- セクション間に十分な「息継ぎ」があるか
- 情報が詰まりすぎて圧迫感がないか
余白は「何もない空間」ではなく、情報のグルーピングを伝える構造です。
AIはここの意図を理解していません。
軸2:階層(ビジュアルヒエラルキー)
「何を最初に見てほしいか」の優先順位です。
AI生成UIでは、視覚的に目立つコンテナに情報密度が低い、逆に重要な情報が小さく埋もれている、
という不整合が頻繁に起きます。
NN/gの研究では、これを「Frankensteinレイアウト」と呼んでいます。
ランダムにつぎはぎされたような印象になるデザインのことです。
チェックポイント:
- ページを開いた瞬間、最初に目が行く場所が「意図した場所」か
- CTAボタンが他の要素に埋もれていないか
- 見出しと本文のサイズ差は十分か
軸3:タイポグラフィ
フォントサイズのメリハリと行間のリズムです。
AI生成デザインでは、見出しと本文のサイズ差が弱く、階層が曖昧になる傾向があります。
Figma公式のタイポグラフィガイドでは、本文16px、H1は48px、行間は文字サイズの1.5倍が推奨されています。
チェックポイント:
- H1 → H2 → H3 → 本文のサイズが段階的に縮小しているか
- 行間が詰まりすぎていないか(目安:文字サイズの1.4〜1.6倍)
- フォントの種類が3つ以内に収まっているか
軸4:コントラスト
テキストの読みやすさに直結します。
81%のホームページが低コントラストテキストの問題を抱えているという調査があります。
AI生成デザインも例外ではなく、WCAG(ウェブアクセシビリティガイドライン)違反を頻繁に含みます。
ある分析では、Figma Sitesのデモサイトから210件のWCAG違反が検出されたと報告されています。
チェックポイント:
- 薄いグレーの文字が背景に溶けていないか
- 画像の上にテキストを置いている場合、読めるか
- WCAG AA基準(通常テキスト4.5:1以上)を満たしているか
コントラスト比はFigmaのプラグインで一発で測れます。
感覚ではなく数値で判断できる軸です。
軸5:配色
色の一貫性とバランスです。
Figma AIは同じプロンプトでも配色がランダムに変わります。
ブランドカラーを意識した配色設計がされていないケースがほとんどです。
チェックポイント:
- メインカラー、アクセントカラー、ニュートラルカラーが体系的に使われているか
- アクセントカラーは1〜2色に絞られているか
- 色の意味が統一されているか(赤=エラー、緑=成功、など)
この5軸すべてを詳細に覚える必要はありません。
まずは「余白」と「階層」の2つだけ意識してみてください。
この2つが整うだけで、デザインの印象は劇的に変わります。
Figma AIの具体的な使い方と「どの場面で使い、どの場面で手動にすべきか」の判断基準は、Figma AIの使い方 — 操作より先に知るべき判断基準で詳しく書いています。
もっと体系的にデザインの基礎から学びたい方は、デザイン初心者が最初にやるべきことも参考になるはずです。
Figma AIが「使える」に変わった瞬間

5軸を意識するようになって、Figma AIとの付き合い方が完全に変わりました。
Before:感覚で迷走していた頃
- Figma AIで生成する
- 「なんか違う」と感じる
- プロンプトを変えて再生成する
- また「なんか違う」
- 手動で色やフォントをいじる
- さらに迷走する
- 3時間後、最初とほぼ同じものが残る
After:判断基準を持った今
- Figma AIで生成する
- 5軸でチェックする
- 「余白が均一すぎる」「H1とH2のサイズ差が足りない」と言語化する
- 問題点に絞って手動で修正する
- 再度5軸でチェックする
- 30分で完了
変わったのはツールではなく、自分の「見方」です。
Claude Code × Pencilで実際にAIデザインを試した記録でも書きましたが、AIデザインツールの価値は「完成品を出す」ことではなく「叩き台を出す」ことにあります。
その叩き台をどう評価して、どう仕上げるか。
ここが人間の仕事です。
具体的な場面で言うと、先日Figma AIでランディングページの叩き台を生成したとき、最初に目についたのは「ヒーローセクションのCTAボタンが視覚的に埋もれている」ことでした。
以前の自分なら「なんか弱い」で終わっていたはずです。
でも5軸の「階層」を意識していたから、「ボタンの周囲に余白を追加し、フォントウェイトを上げ、背景とのコントラスト比を確認する」という具体的なアクションに落とせました。
この「言語化 → 具体的な修正」のサイクルが回り始めると、Figma AIは一気に実用的なツールになります。
判断軸を作る2つの自問で書いた「自分なりの判断軸」、それがデザインの領域では5軸にあたります。
そして「観測」という判断軸の考え方で語った「観測する力」こそ、AI時代のデザインで最も価値がある能力です。
まとめ:AIは80点まで一瞬、最後の20点は判断力

Figma AIが「使えない」と感じる原因を整理します。
表面的な原因(上位記事が書いていること):
- 設定・プランの問題
- 精度の不安定さ
- ベータ機能のリスク
本質的な原因(この記事で伝えたかったこと):
- AI生成物を評価する判断基準がない
- 「なんか違う」を言語化できない
- だから何を直せばいいか分からない
解決策:
- 5軸(余白・階層・タイポグラフィ・コントラスト・配色)でチェックする
- まず余白と階層の2つだけ意識する
- 感覚ではなく、軸に沿って言語化する
AIは叩き台を出すのが得意です。
Figma AIなら数十秒でUIが生成されます。
でも、その叩き台が80点なのか60点なのか、どこを直せば90点になるのか。
それを判断するのは人間の仕事です。
Figmaの2025年AIレポートによれば、85%のデザイナーがAI学習を将来に不可欠だと考えています。
AIを否定する必要はありません。
必要なのはもっとAIを学ぶことではなく、AIの出力を評価する目を持つことです。
AIツールの失敗から学んだ本当の使い方でも、Figmaコンポーネント設計の実践ガイドでも、繰り返し書いてきたことがあります。ツールの性能は上がり続ける。
でも使う側の「見る目」がなければ、どのツールを使っても結果は同じです。
5軸チェックの全体像と具体的な改善ワークフローは、Figma AIのデザインが80点止まりなら — 5軸チェックで90点にする方法でさらに踏み込んで解説しています。
5つの軸を体系的に深掘りしたい方のために、「Vibe Codingの落とし穴 — AI生成サイトをプロ品質に仕上げる5つの判断基準」というUdemy講座を準備中です。
各軸の実践テクニックと、Before/Afterの改善例を詳しく解説する予定です。
どなたかの参考になれば幸いです。
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参考文献
- Figma’s 2025 AI report — デザイナーのAI活用状況に関する公式データ
- Why AI is exposing design’s craft crisis (DOC) — AIとデザインクラフト危機の分析
- Taste Is the New Bottleneck (designative) — 判断力がボトルネックになる時代の分析
- Prompt to Design Interfaces: Why Vague Prompts Fail (NN/g) — AI生成UIの品質問題に関する研究
- What is Visual Hierarchy? (IxDF) — ビジュアルヒエラルキーの専門解説

