発想フェーズは、なぜ苦しいのか

「もっと良いアイデアを出さなきゃ」「ここで正解を出さないと」。
発想フェーズになると、こういう空気が生まれやすいです。
焦りが生まれ、無理にひねり出し、後工程で大きくズレる。
この繰り返しで、発想フェーズそのものがしんどくなっていきます。
でも、発想がうまくいかない原因は、アイデア力の問題ではありません。
「正解を出そうとする構え」そのものが、発想を止めているのです。
アイデア=答え、良い案=採用されるもの。
こういう無意識の前提があると、自己検閲が働きます。
「これは違うかも」「もっと良い案があるはず」と考えるうちに、結局、無難な案しか出せなくなる。
発想フェーズで一番がんばっているのに、一番空回りしやすいのは、この構えのせいです。
発想段階で「正解を出した」失敗談

以前、発想段階で「これが正解です」と言い切ってしまったことがあります。
定義編で仮に置いた課題に対して、「この方向が一番良いと思います」と自信を持って提案しました。
クライアントもその前提で話を進め、プロジェクトは順調に見えました。
ところが、後から違和感が出てきても、もう引き返せません。
「最初にこの方向で合意したから」という空気が、軌道修正を難しくしました。
発想フェーズで正解を確定させてしまった、典型的な失敗です。
振り返ると、アイデアを「決めるためのもの」として出していました。
でも、発想フェーズで決めてしまうと、その後の検証や調整の余地がなくなります。
発想は「仮説を並べる」作業

発想フェーズは「正解を出す場所」ではなく「仮説をいくつか置く場所」です。
この視点に切り替えると、発想が一気に軽くなります。
うまくいった経験があります。発想を「A案・B案・C案」という比較材料として出したとき、「どれが正解か」ではなく「どれを試すと何が分かるか」という話ができました。
アイデアは決めるためのものではなく、判断を前に進めるための材料だと実感した瞬間です。
「これは仮説です」と口に出せるようになると、発想フェーズの責任感が軽くなります。
アイデアが出ない=ダメ、ではなくなる。出したアイデアが採用されなくても、それは「その仮説は違った」というだけの話になります。
シリーズの中での発想フェーズの位置づけ

このシリーズでは、共感編で「決めない」姿勢を、定義編で「仮に置く」ことを扱いました。
発想編のテーマは「並べて試す」です。
共感フェーズで集めた材料、定義フェーズで置いた仮説を、検証可能な形に変換する。
それが発想フェーズの役割です。
だから、ここで「正解を出す」必要はありません。
正解は、この後のプロトタイプやテストで育てていくものです。
デザイン思考が現場で使えない理由で書いたように、デザイン思考は「正解を出す」ものではなく「正解を育てる」もの。
発想フェーズは、その育てる種を複数用意する段階なのです。
まとめ

発想フェーズが苦しいのは、「正解を出さなきゃ」という構えが原因です。
アイデア出しは、正解を決める場ではなく、検証用の仮説を並べる作業。
この視点に切り替えるだけで、発想フェーズの重さが変わります。
「良いアイデアを出さなきゃ」という焦りを手放して、「どの仮説を試してみようか」という姿勢で臨む。それだけで、判断は前に進み始めます。
参考になれば幸いです。
正解を育てるには、まず自分の現在地を知ることから。
自分を観測するための100の問いというPDFを無料で配布しています。
「何を考えればいいか分からない」というときに、問いかけから始めるきっかけになれば幸いです。
