はじめに
デザインやフロントエンドの知見や経験があるけれどバックエンドがわからない。——いつかはアプリをリリースしてみたい。
AIという相棒に出会い、チャレンジしてみて、かなり色々とあったけれど無事デスクトップアプリをリリースできました。
この記事では、バックエンド初心者だった私がAIを活用して個人開発に挑戦し、TestFlightへ151回、リジェクト21回という試行錯誤を経てデスクトップアプリをリリースするまでの体験を共有します。
アイディアはあるけど技術に自信がない、そんなあなたの背中を押せる内容だと思います。
目次
一人で一通り完成させるには技術が足りなかった私が個人開発を始めた理由

ずっと抱いていた「作りたい」という想い
アイディアややってみたい気持ちはずっとありました。情熱もあったと思います。17年ほどweb制作の世界にいて、コーダーからフロントエンド、デザイン、ディレクション・・・色々とやりましたがバックエンドだけはほとんど未経験。「いつかは技術を身につけて・・・一人でアプリやWebサービスを!」と先延ばしにする日々が続いていました。
そんな時、ChatGPTやClaudeの登場が私の背中を押してくれました。AIに聞きながら作る——、AIに実際に書いてもらう。この新しいスタイルなら、知見がなくても、技術力がなくても、相棒と二人三脚で進められると確信したのです。
AIが可能にした新しい開発スタイル
技術の壁を一人で超えるのではなく、AIにざっくり作ってもらいながら手直しする。この方法なら、自分の能力が拡張される感覚を味わえます。
プラグインやパッケージにもやたら詳しく技術選定にもかなり頼もしい存在です。
実際の実装作業もはやく、それこそ完璧を目指すのではなく、まず動くものを作り、少しずつ改善していく。今までもやっていたこの「小さく始めて大きく育てる」アプローチ、AIの存在で私の開発スタイルはさらに強靭になりました。
AIを活用した個人開発の始め方

開発を始める前、何から手をつければいいのかわからず迷いました。デザインやHTML、CSSはそれなりにできる。JSも一応かける。しかし、Webサイトは作れるがアプリケーションをつくるには知見も技術も足りないところがありました。
AIと対話しながら進めることで、自然と道筋が見えてきて、うまいこと足りないところを埋めることに繋がりました。
ステップ1:アイディアの具体化とAIツールの選定
まず大切なのは、作りたいものを明確にすることです。私の場合、お気に入りのアプリがたくさんありただそれを自分好みに変えたいと思ったり、残念ながら開発が終了してしまったりしたものをできればまた使いたいと思っていたので、その再現から始めました。
使用したAIツールは以下の通りです。
- **ChatGPT** – 設計相談、エラー解決、パッケージ選定
- **Claude** – コード生成
ステップ2:AIと対話しながらの設計フェーズ
AIに「こういうアプリを作りたい」と相談するところからスタート。技術選定も全てAIと対話しながら決めました。
最初はElectron(Webの技術でデスクトップアプリを作るフレームワーク)で開発を始めましたが、appleの環境であるTestFlightで起動できない問題にぶつかり、改めてTauri(Electronより軽量な同様のフレームワーク)に作り直す決断も、AIとの対話から生まれました。
技術的な判断基準がわからなくても、AIに選択肢を出してもらい、メリット・デメリットを聞きながら決められます。

Electronは名前だけ知っていた。Tauriは名前すら知らない。どちらも使ったことはない。Webの技術をそのまま使えるという理由でElectronを最初に選びました。あとは、多くの有名アプリが採用しているというのも決め手でした。
ステップ3:実装フェーズでのAI活用法
実装フェーズでは、エラーの連続でした。でもAIに「このエラーが出たけどどうすればいい?」と聞けば、ほとんどの場合解決策を提示してくれます。
そこそこ動くようになった後は、設計不足というか、フロントは動くけどバックエンドとの連携ができていないようなところが散見され、コーディングは早いけれど具体的に決めていないところはたまたまやってくれた場合のみのような経験もできました。
重要なのは、AIへの質問の仕方です。以下の3つを伝えるだけで、的確な回答が返ってきます。
- エラーメッセージを全文コピペ
- 何をしようとしていたかの説明
- 使用している環境・バージョン情報
- XXXのようなことができる想定だけど、実装が足りないものって何かある?
テストフライト151回、リジェクト21回の試行錯誤

実装が進み、いよいよリリースに向けた申請フェーズへ。Appleの環境にアップして実際に確認するタイミングで、ここからが本当の試行錯誤の始まりでした。
まずそもそもAppleの環境にアップできない
証明書というものがあって、まずそれを適切にパッケージングしないといけない。実際のプログラミングなどの制作技術とは別の話で、アプリをリリースするためにどのようなことをしないのか?みたいなところでかなりつまづきました。

若干トラウマですが、かなりいい勉強にはなりました。
最初のリジェクトから学んだこと
アプリが形になり、いざApp Storeへ申請。しかし結果はリジェクト。最初はショックでしたが、これが長い学びの道のりの始まりでした。
リジェクト理由を読み、AIに「このリジェクト理由にどう対処すべき?」と聞く。修正して再申請。この繰り返しが、最終的に151回のテストフライト、21回のリジェクトにつながりました。
頻出するリジェクト理由とその対策
私が経験した主なリジェクト理由と対策を紹介します。
**1. 機能未実装の不備**
これは、私の実装漏れです。やはりそこそこ設計をしっかりしていないといろんなところでいろんな漏れが発生するんだなと学びました。
**2. アプリの説明不足、プライバシー・ポリシーのページなんかも**
スクリーンショットと説明文を充実させることで解決しました。プライバシー・ポリシーのページも用意しました。
これも制作とはまた別の話で、アプリをリリースするために必要なこと。これらの下書きも叩きはAIに任せられます。
**3. 機能の動作不良**
テストケースをAIに列挙してもらい、徹底的に検証することで防げるようになりました。
この頃から、やったことのなかった設計もAIを活用しながらなんとなくやってみるようになりました。
**4. デザインガイドライン違反**
Apple Human Interface Guidelinesの該当箇所をAIに要約してもらい、理解を深めました。
技術の壁を乗り越えるためのAI活用テクニック

開発を進める中で、技術的な壁は何度も立ちはだかりました。しかし、AIを上手く活用することで、これらを一つずつ乗り越えられました。
プログラミング知識が足りないときの対処法
Tauri初心者レベルだった私でも、AIに「初心者向けに説明して」と付け加えるだけで、丁寧な解説付きのコードが返ってきます。
機能に必要なパッケージの選定、今回はVueを使ったのですが、これも一応はわかるものの推奨の書き方や知らない部分のベストプラクティスなんかを聞きながら進めることで実力以上のスピード感を出すことができました。
コードを書くときのコツは以下の通りです。
- 一度に全部作らず、小さな機能単位で実装
- 動いたら次へ、という小刻みな進め方で成功体験を積む
- わからないコードはAIに「このコードを行ごとに解説して」と聞く

偉そうに書きましたが、最初からできたわけではなく試行錯誤を続けて行った結果上記になった感じです。
調べたらよく言われていることなのですが、実際にそうでした。
上記をするとうまくいく確率が高いです!
デザインが苦手な人向けのAI活用術
デザイン自体は私は経験があったのですが、実際にはデザインを最初からせずにAIの力で実用的なUIを作りました。
ちょっと実験的なところもあったのですが、AIが作ったデザインを前提にして気になるところをフィードバックして・・・のようなフローで進めたところ、一応自分の中で合格点を出せるレベルのものには近づけたかなと思います。

AIを使って作っているのが目的の一つでもあったので、リリースできていくつか改善した後にデザインはしなおそうと思っています。もっと良くはできますが、現状でも不満がある状態ではありません。
具体的には以下のような質問を投げかけました。
- **色の選定** – 「このアプリのコンセプトに合うカラーパレットを提案して」
- **レイアウト** – 「シンプルで使いやすいレイアウトの例を3つ見せて」
- **アイコン** – Figmaなどのデザインツールと組み合わせて、AIに指示を出しながら作成
- **UI** – 最小のコンポーネント単位で依頼をしていく感じにしました。(ここは私は経験者なのでちょっと専門的かもしれません)
完璧でなくても、ユーザーにとって使いやすいレベルには十分到達できます。
エラー解決にAIを使う具体的な方法
エラーが出たときの私の定番フローを紹介します。
- エラーメッセージをコピー
- ChatGPTに貼り付けて「このエラーの原因と解決策を教えて」
- 提案された解決策を試す
- 解決しなければ、試した内容を伝えて再度質問
このサイクルで、ほぼすべてのエラーを乗り越えました。一人で悩む時間が圧倒的に減り、開発速度が上がります。
初心者が個人開発で挫折しないための心構え

技術面のサポートはAIに任せられますが、メンタル面は自分自身で管理する必要があります。挫折しないために意識したポイントを紹介します。
完璧を求めすぎない
テストフライト151回と聞くと「大変そう」と思うかもしれません。実際地獄でした。
趣味でやっているのになぜこんな体験を・・・
しかし、AIの力があるので次はいけるのでは?という希望が毎回あるのです。
私の場合多分一人だったらやめていたでしょう!個人開発ではありますが、AIと共にやる場合は一人ではありません。
AIという相棒と一緒に、「動くものをまず作る」→「少しずつ良くする」というマインドセットが重要でした。リジェクト21回も、失敗ではなく学びの機会だったと今では思えます。
小さな成功体験を積み重ねる
挫折しそうになったとき、私を支えたのは今思うと小さな成功体験でしたが、結局はAIの力への期待でした。
一応、今思えばというレベルで記載しておきます。
私の場合、日頃見栄えだったり、機能というよりはページを作っているのが多いので、確かに動くものができ、実際に処理が動いたりするのは楽しかったです。
- ローカルで初めて動いた瞬間
- 初めてシミュレータで起動できた瞬間
- 初めてテストフライトに成功した瞬間
こうした小さな「できた!」を大切にすることで、モチベーションを維持できました。開発日誌をつけて、毎日の進捗を記録するのもおすすめです。
実際に使用したAIツールとその評価
開発を通じて複数のAIツールを活用しました。それぞれの特徴と実際の使用感を評価します。
コーディング支援AI
**ChatGPT Codex CLI(5点満点中4点)**
幅広い質問に対応でき、コード生成からデバッグまで万能です。長い対話でも文脈を保持してくれるため、複雑な問題を段階的に解決できました。特にエラー解決では圧倒的な活躍でした。
**Claude Code(5点満点中5点)**
リアルタイムの補完が便利で、繰り返し作業の効率化に最適です。コードを書いている最中に次の行を予測して提案してくれるため、タイピング量が大幅に削減されました。たまに的外れな提案もありますが、許容範囲です。

やっている最中にモデルのアップデートが2回くらい起こったのでトータルの感覚値になってます。
今では、さらに設計をGPT-5-CODEX、実装をClaude Code OPUS4.1という切り分けで使います。
デザイン支援AI
デザインツールとAIの組み合わせで、経験がなくても実用的なUIが作れました。Figmaのプラグインや、Midjourneyでアイコンのインスピレーションを得るなど、使い方次第で可能性は無限大です。
特にカラーパレットの提案や、レイアウトのバリエーション生成では、AIが複数の選択肢を出してくれるため、デザイン初心者でも比較検討しながら進められました。
デバッグ・エラー解決支援
エラーログを貼り付けるだけで、原因と解決策を提示してくれるのは本当に助かりました。
単なるエラーメッセージの翻訳ではなく、「なぜこのエラーが起きるのか」「どう修正すべきか」「今後同じエラーを防ぐには」まで教えてくれるため、学びながら開発を進められました。
今でもなんで直ったかわからないところはかなりありますが、どんなことでエラーになるよ!という知見はかなり溜まりました。やらない方が良いことがなにか的なことがだいぶわかってきた感じです。
アプリリリース後に感じたこと・次のステップ
長い道のりを経て、ついにアプリをリリースできました。その時の感想と、これからの展望を共有します。

こんぐらっちゅれーしょん!のようなメールが来ていて、気づいたらリリースされていました。
そういう設定にしていたようです。
長かったけど、あっけなかった。そんな感想でした。
いや、長かったな。。。
達成感と今後の展望
ついにリリースできて思うことは、達成感というよりあっけなかった感でした。「難しそう」と諦めていたことを、AIと一緒に実現できた喜び。151回のテストフライト、21回のリジェクトという試行錯誤が報われた気はします。
で、改めて思うことは、もっともっとAIを使ってどんどん作ってみようということ。
今後は、このアプリをアップデートしながら、新しいプロジェクトにも挑戦したいと思っています。
AIと一緒なら、次はもっと短期間でリリースできる自信もつきました。
これから個人開発を始める人へのメッセージ
もしあなたが「技術が足りない」「難しそう」と感じているなら、まずはAIに相談してみてください。ローカル環境やシミュレータで動くものを作ってみるだけでも、大きな一歩です。
リリースまでの道のりは忍耐が必要ですが、その先には必ず達成感が待っています。AIを使えば、「作りたい」という想いを形にできる時代です。とにかく最後までアウトプットしてみる。その経験が、あなたの世界を広げてくれるはずです。
まとめ

この記事では、プログラミング初心者がAIを活用して個人開発に挑戦し、テストフライト151回、リジェクト21回を経てアプリリリースを実現した全工程を共有しました。
重要なポイントをまとめます。
- AIを相棒にすれば、技術の壁は乗り越えられる
- 小さな成功体験を積み重ねることが挫折しないコツ
- 完璧を求めず、まず動くものを作ることから始める
- リジェクトも試行錯誤も、すべて学びの機会
- コミュニティとの繋がりがモチベーション維持に役立つ
あなたの「作りたい」という想いが、AIと一緒に形になることを応援しています。参考になれば幸いです。

