デザイン思考が現場で使えない理由|5ステップを「正解を育てる」視点で再解釈

デザイン思考を学んだのに、クライアントワークでうまく使えない。

要望が曖昧な案件ほど、5ステップを回しても「なんか違う」と言われる。

この記事は、デザイン思考が現場で機能しない理由を整理し、「正解を育てる」という視点で5ステップを再解釈したものです。

「デザイン思考、一応知ってはいるんですけど…」

研修で習った。

本も読んだ。

5ステップも言える。

でも、目の前の案件では「で、今なにをすればいいんだっけ?」となる。

フレームは頭に入っているのに、現場では使えない。5ステップをなぞっても、クライアントからの「なんか違う」は減らない。

それ、デザイン思考の使い方が間違っているかもしれません。

デザイン思考を「正解探し」に使っていないか

ここで一つ、はっきり言います。

デザイン思考を「正解探し」に使おうとすると、現場ではほぼ確実に破綻します。

多くの人がデザイン思考を学ぶとき、こう思っています。

  • 5ステップを踏めば、正しい答えにたどり着ける
  • ユーザーに共感すれば、正解が見える
  • プロトタイプを作れば、正解かどうか検証できる

でも実際の現場では:

  • クライアントの要望が曖昧
  • ユーザー像がぼんやり
  • 「正解」を持っている人が誰もいない

この状態で「正解を見つける」ためにフレームワークを使おうとすると、どこかで詰まります。

私自身、スタンフォードd.schoolの一般参加ワークショップでデザイン思考を学び、Web制作の現場で何度も試してきました。最初は「これで正解が見つかる」と期待していた。でも、クライアントワークに持ち込むと、うまくいかないことの方が多かった。

転機になったのは、「正解を見つける」から「正解を育てる」に視点を切り替えたとき。

フレームワークの使い方が変わりました。

デザイン思考は「正解を育てる」プロセス

ここで視点を変えます。

デザイン思考は、「正解を見つける」ツールではありません。

「正解を育てる」ためのプロセス設計です。

最初から正解があるわけではない。でも、プロセスを回すことで、少しずつ正解の輪郭が見えてくる。

これは、要望を正解に育てるという考え方とまったく同じです。

5ステップは「正解を探す手順」ではなく、「正解を育てる環境を作る設計図」として捉え直す。

そうすると、現場で動くようになります。

5ステップを「正解を育てる」視点で再解釈する

では、具体的にどう捉え直すか。5ステップそれぞれを見ていきます。

1. 共感(Empathize):要望を「そのまま」受け取る

従来の理解:

  • ユーザーの気持ちに寄り添う
  • インタビューで本音を引き出す

「正解を育てる」視点:

  • この時点で方向性を決めない
  • 要望は「正解の種」として受け取る
  • 曖昧なまま、判断を保留する

ここでやりがちな失敗は、「共感」の段階で答えを出そうとすること。

「ユーザーはこう思っているはずだ」と決めつけると、その後のプロセス全体が歪みます。

共感フェーズの役割は、材料を集めること。まだ何も決めなくていい。

2. 定義(Define):本当の課題を言語化する

従来の理解:

  • 問題を明確にする
  • 解くべき課題を設定する

「正解を育てる」視点:

  • すべての課題を解こうとしない
  • 「今、判断できること」と「まだ見えないこと」を分ける
  • 課題は「仮説」として置く

ここで大事なのは、完璧な課題定義を目指さないこと。

課題は、後から変わっていい。

むしろ、プロセスを回す中で精度が上がっていくもの。

最初から「正しい課題」を見つけようとすると、動けなくなります。

3. 発想(Ideate):「ひらめき」ではなく「仮説を置く」

従来の理解:

  • たくさんアイデアを出す
  • ブレストで発散する
  • 良いアイデアを見つける

「正解を育てる」視点:

  • 正解案を出そうとしない
  • 「これが正解かもしれない」という仮説を複数置く
  • 判断材料を増やすためのアイデア出し

発想フェーズは、「正解を見つける」場ではありません。

「判断できる状態を作る」ための仮説生成です。

だから、アイデアの良し悪しを評価するのではなく、「これを試したら何がわかるか」という視点で選ぶ。

4. 試作(Prototype):判断できる状態を作る

従来の理解:

  • アイデアを形にする
  • 動くものを作る
  • 完成度を上げる

「正解を育てる」視点:

  • 完成させようとしない
  • 「これで判断できるか?」を基準に作る
  • 最小限で、最大の学びを得る

試作の目的は、「すごいものを作る」ことではありません。

「これでいいか判断できる状態を作る」ことです。

だから、作り込みすぎない。判断に必要な情報が得られる最小限の形を目指す。

5. 検証(Test):フィードバックを情報に変換する

従来の理解:

  • ユーザーに見せて評価をもらう
  • 良いか悪いかを判定する
  • 合格なら進む、不合格なら戻る

「正解を育てる」視点:

  • 合否判定をしない
  • フィードバックは「ダメ出し」ではなく「情報」
  • 「何がわかったか」を次に活かす

検証フェーズでありがちな失敗は、「OK / NG」の二択で考えること。

でも、正解を育てる視点では、フィードバックはすべて情報です。

「なんか違う」も情報。「ここは良い」も情報。その情報を使って、次のサイクルで精度を上げていく。

5ステップは「1回で終わる」ものではない

ここで重要な補足をします。

デザイン思考の5ステップは、1回で完結するものではありません

共感 → 定義 → 発想 → 試作 → 検証

また共感に戻る

精度が上がる

正解の輪郭が見えてくる

「正解を育てる」というのは、このサイクルを回し続けることです。

1回目で正解が出なくても、失敗ではない。

むしろ、回すたびに情報が増えて、判断の精度が上がっていく。

これが「育てる」ということ。

実務でつまずきやすいポイント

今回はデザイン思考全体を「正解を育てる」視点で捉え直しましたが、実務では特につまずきやすい箇所があります。

ヒアリングで「何を決めないか」

共感・定義フェーズで、つい「方向性を決めよう」としてしまう。

でも、この段階で決めすぎると、後で動けなくなる。

ヒアリングの目的は「決めること」ではなく「材料を集めること」

何を決めないかを意識するだけで、プロセスの柔軟性が上がります。

フィードバックをどう質問に変換するか

検証フェーズで「なんか違う」と言われたとき、そのまま受け取ると心が折れる。

でも、「何と比べて違うと感じますか?」「それが解決すると、何が楽になりますか?」と質問に変換すると、フィードバックが判断材料に変わります

デザイン思考は「組み込むもの」

この記事で伝えたかったのは、一つだけです。

デザイン思考は「使う」ものではなく、「正解を育てるプロセス」に組み込むもの。

5ステップをなぞっても正解は見つからない。

でも、「正解を育てる」という視点でプロセスを設計すると、フレームワークが現場で動き出す。

デザイン思考を学んだのに使えないと感じている人は、「正解を探す」から「正解を育てる」に視点を切り替えてみてください。

完璧なフレームワークを探すのではなく、フレームワークを自分の現場に合わせて組み立てていく。

それが、デザイン思考を「本当に使える」ようにする唯一の方法です。

正解を育てるには、まず自分の現在地を知ることから。

自分を観測するための100の問いというPDFを無料で配布しています

フレームワークを使う前に、自分自身を観測する習慣をつけてみてください。

参考になれば幸いです。