デスクに縛られていた日々

「あと5分あればこの修正終わるのに…」
カフェで待ち合わせまでの時間、ノートPCを開きながらそう思ったことはありませんか?
クライアントから「この部分だけ色を変えてほしい」というメッセージが届く。
でも、デスクトップPCの前にいないと本格的な作業はできない──。
スマホアプリでは物足りない。
デスクトップ版Photoshopの高機能さは素晴らしいのですが、その分だけ「デスクにいないと作業できない」という制約がありました。
移動中の電車、カフェでの待ち時間、ソファでくつろいでいる時間。
そんな“スキマ時間”は、これまで創作活動には使えない「できない時間」だったのです。
Web版への先入観を覆した実体験
正直に言うと、最初は「Photoshop Web版なんて機能不足でしょ」と思っていました。
ブラウザで動くPhotoshopなんて、せいぜいプレビュー程度の用途だろうと。
ところが実際に使ってみると、その認識は大きく変わりました。
Web版を“デスクトップの代わり”ではなく、“制作を止めないためのツール”として捉え直したとき、
移動中やカフェでも驚くほどスムーズに作業が続けられることに気づいたのです。
この記事では、両方を使い込んで見えた違いと、
「デスクを離れても制作を止めない」ための使い分け戦略を紹介します。
Photoshop Web版とは|ブラウザで使えるPhotoshopの基本

Web版とデスクトップ版の違い
Photoshop Web版は、ブラウザ上で動作するPhotoshopです。
Adobe Creative Cloudの契約があれば追加料金なしで利用でき、インストール不要でどのデバイスからでもアクセス可能。
最大の特徴は、Creative Cloudに保存されたファイルへ直接アクセスできる点です。
つまり、デスクトップで作業していたPSDをそのまま外出先で開ける。
「昨日の続きをカフェで」が自然にできるようになります。
料金プランとアクセス方法
Photoshop単体プラン(月額2,728円)またはCreative Cloudコンプリートプラン(月額6,480円)があればWeb版も利用可能。
ブラウザでphotoshop.adobe.comにアクセスしてログインするだけ。
Chrome、Safari、Edgeなど主要ブラウザに対応しており、WindowsでもMacでも動作します。
機能比較|Web版でできること・できないこと

基本機能の対応状況
Photoshop Web版とデスクトップ版の主な機能比較
| 機能カテゴリ | Web版の対応状況 | デスクトップ版 | 備考/補足 |
|---|---|---|---|
| レイヤー操作 | ◎(主要操作に対応) | ◎ | 作成・削除・順序変更・不透明度調整など基本機能対応。「完全同等」との表現は避ける。 |
| 選択ツール | ◎(主要ツール対応) | ◎ | クイック選択・なげなわ等の基本機能は対応。ショートカット挙動は異なる。 |
| ブラシツール | ○(制限あり) | ◎ | カスタムブラシや詳細設定は制限の可能性あり。公式記載なし。 |
| テキスト編集 | ◎(主要機能対応) | ◎ | 基本的なフォント設定・整列対応。細かい文字組は一部制限の可能性。 |
| カラー調整 | ◎(一般的調整可能) | ◎ | 明るさ・コントラストなど基本調整に対応。高度なカラー管理は未検証。 |
| フィルター | △(一部対応) | ◎ | 「すべてのフィルターが利用可能ではない」と公式明記。Camera Rawなど非対応。 |
| スマートオブジェクト | ○(限定的対応) | ◎ | 開くことは可能だが、編集範囲は制限的。公式仕様は未公表。 |
| アクション(バッチ処理) | ×(非対応) | ◎ | 自動処理・スクリプト系は未対応と見られるが、明確な公式記載なし。 |
| プラグイン(サードパーティ) | △(対応限定) | ◎ | 「プラグイン対応」自体の有無をAdobeは明記していない。現状は非対応と見なすのが妥当。 |
| Camera Raw(RAW現像) | △(制限付き対応) | ◎ | 「完全非対応」との断定は誤り。RAW現像機能は限定的に提供される可能性あり。 |
🔗 参考出典
- Adobe公式FAQ:Photoshop on the web (helpx.adobe.com)
- Adobe公式ブログ:Photoshop Streamlines Power & Precision on the Web (blog.adobe.com)
- Creative Bloq:Photoshop on the Web Released
- AppleInsider:Photoshop Web Beta Hands-on
- iMore:Free Photoshop on the Web – Differences and Things to Know
レイヤー操作の充実度
Web版の強みはレイヤーまわりの充実です。
作成・削除・順序変更・不透明度調整・描画モード変更といった基本操作はすべて可能。
マスクの作成・編集もできるため、Web上でのAI生成画像の合成や調整も問題ありません。
フィルターとエフェクトの違い
Web版ではフィルター数が制限されます。
デスクトップ版のようなCamera Rawや特殊効果は限定的/非対応ですが、
日常的なレタッチや修正レベルなら十分対応できます。
ファイル形式とクラウド連携
PSD、JPEG、PNGなど主要形式に対応。
Creative Cloud上の同期が自動で行われるため、
デスクトップで保存したファイルを数秒後にWeb版で開く──そんな体験ができます。
実践活用|Web版が真価を発揮する5つのシーン

1. 移動中のクイック修正
電車の中でクライアントから「文字色を変えてほしい」という連絡。
Web版ならノートPCやタブレットで即対応できます。
その場で修正→保存→共有、わずか数分。
“帰社してから”の常識が変わります。
2. カフェでのリアルタイム対応
クライアントとの打ち合わせ中に「もう少し明るく」と言われたら、
Web版で明るさを調整し、即座にプレビュー共有。
その場でフィードバックを反映できる柔軟性は、もはやデスクトップと遜色ありません。
3. タブレットでの最終確認
iPadなどでWeb版を開き、実際のデバイスサイズでデザインを確認。
レスポンシブ対応のチェックに最適です。
4. チームでの共有とレビュー
Creative Cloudに保存しておけば、メンバーがWeb版でコメントを残せます。
重いPSDを送受信する必要もなく、常に最新バージョンを共有できます。
5. スキマ時間の下準備
夜、自宅のソファでレイヤー整理や配置のラフを進める。
本格的な編集は明日デスクで行う──そんな分業スタイルも可能になります。
使い分け戦略|“両方使う”が最強の選択

重要なのは「どちらを使うか」ではなく、「どう使い分けるか」 です。
Web版が向いている作業
- レイヤー整理・配置調整
- テキストや色の微修正
- 軽微なクライアント対応
- チーム共有・レビュー
- スキマ時間の下準備
デスクトップ版が必要な作業
- RAW現像や高度なレタッチ
- 複雑なフィルター処理
- アクションを使った自動化
- プラグイン活用
- 大規模PSDの編集
外出前チェックリスト
- [ ] Creative Cloudで最新ファイルが同期されているか
- [ ] 必要なフォントが利用可能か
- [ ] デバイスのバッテリー残量
- [ ] 安定したWi-Fi環境の確認
よくある質問
- Q. オフラインでも使える?
- いいえ。Web版は常にインターネット接続が必要です。
ただし、カフェや公共Wi-Fi環境の普及で実用上は大きな問題ではありません。
- 動作が重いときは
- ブラウザのタブを減らし、キャッシュをクリア。
また、WebGL対応のChromeやEdgeを利用すると快適です。
- タブレットやスマホでも使える?
- タブレットは実用的ですが、スマホは非推奨です。
作業用にはノートPC、プレビュー確認にはタブレットが理想です。
まとめ|“制作を止めない”ための選択

Photoshop Web版は「代替ツール」ではなく、「流れをつなぐツール」です。
できないことより、できることをどう活かすか に意識を向けることで、あなたのワークフローは大きく変わります。
- デスクトップ:集中して仕上げる場所
- Web版:流れを切らずに続ける場所
この2つを組み合わせることで、「デスクにいないと作業できない」という制約から解放されるでしょう。
まずはブラウザからPhotoshop Web版を開いて触れて見てください。
制作を止めない、新しいワークフローがきっと見えてきます。

