Illustrator生成AI体験記|実務で使える3大機能とワークフロー変革

ベクターを“描く”時代は、変わりつつある!?

2008年にIllustrator CS3を手にして以来、ペンツールでパスを引き、ベジェ曲線を調整し、パスファインダーで形を作る──そんな作業がデザイナーの基本スキルだと信じていました。

しかし、Illustratorに搭載された生成AI機能を本格的に使い始めてから、その常識は大きく揺らぎました。

たとえば、Webサービス用アイコンセットの制作。

以前なら2〜3時間かかっていた作業が、今ではわずか15〜30分で完了します。

しかも、想定外のアイデアや10パターン以上のバリエーションが数分で出揃う。

AIは単なる“時短ツール”ではなく、“発想を拡張する相棒”になったのです。

この記事では、2025年10月時点での最新Illustrator生成AI(Text to Vector Graphic・Generative Recolor・Text to Pattern)の活用法を、実務レベルのワークフローと成功・失敗の実例を交えて解説します。

Adobe Firefly 2025年版:Photoshopユーザーに最も最適なAI制作ワークフロー

3時間が30分に──実際のワークフロー変革


従来のフロー:
ラフ → ペンツールでパス作成 → 配色調整 → バリエーション展開(約3時間)

AI導入後のフロー:
プロンプト入力 → ベクター生成(10秒)→ 微調整(10分)→ Generative Recolorで配色(3分)→ バリエーション展開(10分)

作業そのものよりも、「提案力」が劇的に上がりました。

AIが提示する10案のうち、どれも一定水準のクオリティを保ち、そこから人の目で方向性を選び取る──これが新しい“デザインの形”です。

Illustrator生成AIの主力機能(2025最新版)

Text to Vector Graphic(ベクターを生成)

テキストプロンプトから、編集可能なベクターを自動生成。
「minimalist mountain icon」「abstract wave pattern」など、自然言語で指示するだけで、数秒で形になります。

生成結果はラスター画像ではなく完全なベクター。
拡大しても劣化せず、アンカーポイントも整理されていて編集しやすい。
AdobeがFireflyモデルにベクターデータを学習させているため、パス構造のクオリティが非常に高いのが特徴です。


プロ向けのポイント:

  • 生成結果はSVGや.aiファイルとして編集可能
  • 日本語よりも英語プロンプトの方が安定
  • 「スタイル+主題+形状特徴」でプロンプトを構成するのがコツ

2. Generative Recolor(配色の自動生成)

選択したオブジェクトに対して、AIが配色バリエーションを自動提案。

「warm autumn palette」「corporate blue theme」などのキーワードを入力するだけで、数秒で数パターンの配色が得られます。

従来、バリエーション作成や検討としてそこそこの時間を占めていた「配色検討」が、劇的改善。

実務で効果的なプロンプト例:

  • “professional color scheme based on #3B82F6, complementary and analogous colors”
  • “modern tech brand palette, neutral background, vivid accent”

3. Text to Pattern

つづいて、Text to Pattern

「seamless geometric pattern」「organic floral texture」などの指示で、AIが繰り返し可能なパターン素材を自動生成します。

これにより、バナーやパッケージデザインの背景制作が圧倒的に早くなりました。

ただ、私がちょっと複雑なものを一度に生成しようとしたのでまだアレですね。

失敗のリアルな例

抽象的すぎるプロンプトだとなかなか思ったものが出力されません。
スタイル参照とか効果とかカラーとトーンをもっと活用しないといけませんね。
例はプロンプトのみのものになります。

失敗例:テック系ロゴ案の初期デザイン

プロンプト:“modern tech startup logo, geometric symbol, circle and triangle combination”

R
R

これはちょっと・・・というか指示のまま・・・
抽象的な部分をもう少し指定したりしないとですかね?
modern tech の解釈が・・・

× 失敗例:キャラクター生成

プロンプト:“cute cat character, smiling, holding a fish”

R
R

ありの場合もあり得ますが、やはり抽象的な部分をもう少し指定したりしないとですかね?
cuteの解釈部分の認識合わせが必要な気が。

まずは「ベクターを生成」をたくさん試してみよう

  • Text to Vector Graphic → 数秒でベクター生成
  • Generative Recolor → 配色10案を1分で生成
  • ワークフロー → 最大70%短縮可能

「minimalist icon, [テーマ], simple geometric shapes」

この一文を入力するだけで、新しいデザイン体験が始まります。
AIは敵ではなく、デザイナーの“もう一人の手”です。
発想を拡張し、創造を加速する──その第一歩を、次のプロジェクトで踏み出してみてください。

AIは「時短」でもあり「発想拡張」ツールでもある

ここまで読んで、「AIは作業を早くするツールだ」と思われたかもしれません。しかし、使ってみて感じるのはAIの本質は「時短」だけではなくて「発想の拡張」でもあるということです。

従来、デザイナーは「時間」という制約の中で戦っていました。

1つのアイデアを形にするのに30分かかるなら、1日で試せるのは10〜15案が限界です。

しかし「ベクターを生成」があれば、1つのアイデアを数十秒で形にできます。つまり、試行回数が10倍になるのです。

「これはどうだろう?」「こういうアプローチは?」と思いついたアイデアを、即座に形にして確認できる。ダメならすぐ次を試せる。この「発想→検証→改善」のサイクルを高速で回せることが、AIの真の価値です。

デザイナーの仕事は、「ペンツールを操作すること」から「最適なデザインを選択すること」へとシフトしています。AIは、新しいスケッチツールです。頭の中のアイデアを、言葉で形にできる道具なのです。

AI時代のデザイナー像

2008年からIllustratorを使い続けてきた私にとって、ペンツールは「デザイナーの証明」でした。

しかし今、その認識は変化しつつありペンツールの技術にプラスアルファで、どうやって思い通りのものを生成するのか?またどうやって思ってもみないけどアリなものを生成するのか?それは、コンセプトで勝負する時代が来ているということです。。

AIが普及すれば、誰でもそれなりのビジュアルを作れるようになります。では、プロのデザイナーの価値はどこにあるのか。それは、以下の3つだと考えています。

  1. 問題を定義する力:クライアントの真の課題は何か、どんなデザインが解決策になるかを見抜く
  2. 選択する力:AIが生成した100のアイデアから、最適な1つを選び出す審美眼
  3. 言語化する力:デザインの意図を言葉で説明し、クライアントや開発チームに伝える

技術的なスキルは、AIによってコモディティ化します。

しかし、「なぜこのデザインなのか」を語れる力は、AIには代替できません。

私自身、最近はIllustratorを開く時間より、クライアントとの対話に時間を使っています。「このボタンは青がいいですか、緑がいいですか」ではなく、「このサービスでユーザーに何を感じてほしいですか」という会話です。

AIは敵ではなく、デザイナーを「手を動かす人」から「考える人」へと解放してくれる存在です。

AI時代にクリエイターが活躍できる領域の変化についての考察