毎週15分の手作業がゼロになった話

毎週金曜、Search Consoleを開いてデータをスプレッドシートにコピペする。
15分。
大した時間じゃないと思っていました。
でも年に換算すると13時間です。
丸一日以上。
しかもこの作業、やるたびに「またか」という気持ちになる。
正直、金曜の午後にやるタスクとしては最悪の部類でした。
今、この作業はゼロです。
n8nというツールで自動化しました。
一度ワークフローを組んでからは、毎週勝手にデータが手元に届きます。
n8nって何? どう読むの? 何ができるの? ——この記事では、実際に使っている立場からそのすべてを解説します。
n8nとは?(読み方と基本概要)

n8nの基本スペック
n8n(読み方:エヌエイトエヌ)は、ドイツ・ベルリン発のワークフロー自動化ツールです。
正式名称は「nodemation」(Node + Automation)で、i18nやk8sと同じヌメロニム(数字略語)の命名パターンですね。
ざっくり言うと、「もしAが起きたら、Bをして、Cに通知する」みたいな処理を、GUIのノードエディタでつなげて自動化できるツールです。
プログラミングなしでも使えますし、JavaScript/Pythonでカスタムコードを書くこともできます。
2026年2月時点の主なスペックをまとめます。
- 連携サービス数: 400+(公式コアノード)、コミュニティノード含め1,000+
- ワークフローテンプレート: 900+
- GitHub Stars: 175,000+
- ライセンス: Fair-code(Sustainable Use License)※
- 最新バージョン: v2.7.5(2026年2月13日)
- 資金調達: シリーズCで$180M調達、評価額$2.5B(約3,750億円)
※ n8nはソースコードが公開されていますが、純粋なOSSライセンス(MIT/Apache等)ではありません。
「Fair-code」という独自モデルを採用しており、個人利用・商用利用は可能ですが、n8n自体の再販には制限があります。
なぜ今n8nが注目されているのか
n8nの検索トレンドはここ1年で+395%。この急成長にはいくつか理由があります。
まず資金。
2025年10月にシリーズCで$180M(約270億円)を調達しました。
NVIDIAやSequoiaが参画しています。
自動化ツールに270億円——市場の期待値がわかります。
AIとの親和性も大きい。
n8nはLangChain統合やMCP(Model Context Protocol)対応を早期から進めており、「AIエージェントを組み込んだワークフロー」を構築できます。
Claude Codeのマルチエージェント活用のようなAIオーケストレーションと組み合わせると、かなり面白いことができます。
そして2025年12月リリースのn8n 2.0。
セキュリティのサンドボックス化、パフォーマンス最大10倍向上、Chat Hub機能の追加。
プロダクトとしての成熟度が一段上がりました。
n8nで何ができるのか(5つの活用例)

「自動化ツール」と言われてもピンとこない方も多いと思います。
具体的に何ができるのか、5つの例で紹介します。
API連携による自動データ取得
外部サービスのAPIを定期的に叩いて、データを取得・保存する処理です。
私の場合はSearch ConsoleのAPIから週次データを自動で引っ張っています。
スプレッドシートへの転記もn8nが勝手にやってくれます。
Slack・メール通知の自動化
「GitHubにPRが作られたらSlackに通知」「フォームに回答が来たらメールで知らせる」など、通知系の自動化はn8nの得意分野です。
条件分岐も組めるので、「エラーのときだけ通知」のような細かい制御もできます。
AIツールとの連携
ここがn8nの今一番アツいところです。
LangChainとの統合が組み込まれているので、RAG(検索拡張生成)パイプラインやAIエージェントをノーコードで構築できます。
MCP対応も進んでおり、Obsidian×Claude Codeの知識管理術で紹介しているようなAIツールスタックとの組み合わせも可能です。
定期タスクの自動実行
Cronスケジュールで「毎朝9時にRSSフィードをチェック」「毎週月曜にレポート生成」といった定期実行を設定できます。
一度組めば、あとは放置。ぶっちゃけ、これだけでもn8nを入れる価値があります。
データ加工・集計の自動化
CSVの変換、JSONの整形、複数ソースのデータマージ。
Excelで手作業していた集計処理をn8nのノードで組むと、毎回ボタンを押す必要すらなくなります。
Zapier・Makeとの違い(3つの判断軸)

自動化ツールといえばZapierやMake(旧Integromat)が有名です。
n8nと何が違うのか。
批判ではなく、選ぶときの判断軸として3つ整理します。
より詳しい比較はAI自動化ツール4強比較の記事でまとめています。
料金比較
個人で使う場合、ここが一番の分かれ目です。
| 項目 | Dify | Zapier | n8n |
|---|---|---|---|
| 無料枠 | セルフホスト版は完全無料 | 100タスク/月 | 1,000オペレーション/月 |
| 有料プラン | $20/月〜 | $19.99/月〜 | $9/月〜 |
| 課金単位 | ワークフロー実行(ステップ数不問) | タスク(1アクション=1タスク) | オペレーション(1ノード=1オペレーション) |
ポイントは課金単位の違いです。
Zapierは「10ステップのワークフロー」を1回実行すると10タスク消費します。
n8nはステップ数に関係なく1実行としてカウント。
ワークフローが複雑になるほど、n8nのコスト優位性が際立ちます。
セルフホスト版なら月額$0。VPSの費用(月$5〜15程度)だけで済みます。
セルフホストという選択肢
ZapierもMakeもクラウドオンリーです。
n8nだけがセルフホスト(自分のサーバーで動かすこと)に対応しています。
これは「無料で使える」以上の意味があります。
データが自分のサーバーから外に出ない。
APIキーも外部に預けない。
個人の開発環境やクライアントデータを扱う場合、このデータ主権は大きな安心材料です。
カスタマイズ自由度
Zapierは7,000+のネイティブ連携で「つなげるだけ」の手軽さが魅力です。
非エンジニアにはZapierが最適解でしょう。
一方、n8nはネイティブ連携は1,000+と少なめですが、JavaScript/Pythonのカスタムコードを自由に書けます。
外部パッケージも使えます。HTTPリクエストノードがあるので、公開APIを持つサービスなら実質何でもつながります。
「ノーコードで8割、コードで残り2割」——このハイブリッドが効くのは、ある程度コードが書ける人です。
実践例:Search Console週次自動取得ワークフロー

私が実際に運用しているワークフローを紹介します。
やっていることはシンプルです。
- 毎週月曜朝9時にCronトリガーが起動
- Search Console APIから過去7日間の検索パフォーマンスデータを取得
- データを整形して、必要なカラム(クエリ、クリック数、表示回数、CTR、掲載順位)だけ抽出
- JSONファイルとして保存
ノード数は4つ。
構築にかかった時間は約30分でした。
手作業からの解放で感じたこと
正直に言うと、この自動化で節約できる時間は週15分です。
劇的ではありません。
でも本当に変わったのは「心理的なコスト」のほうでした。
金曜の午後に「あ、Search Consoleやらなきゃ」と思い出す、あの小さなストレスがゼロになった。
月曜の朝にはもうデータが届いている。
「考えなくて済む」。この感覚は、時間の数字以上の価値があります。
自動化の最大の恩恵は、時短ではなく認知負荷の解放だったと今は思っています。
n8nの始め方(3つの選択肢)

n8nを始めるには3つのルートがあります。
n8n Cloud(すぐ試したい人向け)
公式のクラウドサービスです。アカウント作成後、すぐにブラウザでワークフローを組めます。
14日間の無料トライアルあり。Starterプランは$20/月(2,500実行/月)。「まず触ってみたい」ならここからがおすすめです。
Docker Compose(自分でホストしたい人向け)
Docker環境があるなら、`docker compose up -d` の1コマンドで起動できます。
セルフホスト版は完全無料で、実行数の制限もありません。
私はこの方法でVPS上に立てています。
セットアップの詳しい手順は、別記事で解説予定です。
デスクトップ版(ローカルで試したい人向け)
Mac/Windows/Linux対応のデスクトップアプリもあります。
公式サイトからダウンロードしてインストールするだけ。
Docker未経験の方はこちらから始めるのが一番ハードルが低いです。
ただし、常時実行やWebhookトリガーには対応していないので、本格運用にはCloud版かDocker Compose版への移行が必要になります。
まとめ:n8nは「自分で持てる自動化エンジン」
n8nは、無料で使えて、自分のサーバーに置けて、コードも書ける自動化ツールです。
Zapierのような「おまかせ型」とは違い、「自分でコントロールできる自動化」を求める人に向いています。
私自身、Search Consoleの自動取得をきっかけにn8nを使い始めましたが、一度この「自動で回る仕組み」を作る感覚を覚えると、次々と自動化したいものが見つかります。
n8nで何を自動化すべきかの考え方は別記事でまとめているので、あわせてどうぞ。
- n8nをDocker Composeでセルフホストする完全ガイド — セルフホストの具体的な手順
- n8nで何を自動化すればいい? — 答えはツールではなく日常の観察にあった
- n8n初心者が最初のワークフローで学んだ失敗と教訓 — 最初に作ったワークフローでハマったこと
- n8n vs Dify徹底比較 — AI特化ツールとの棲み分け
- n8nを日本語化する方法 — セルフホスト版の全手順
- n8n × MCP連携ガイド — Claude DesktopからワークフローをAIツール化
参考になれば幸いです。

