朝食は「食べるべき」でも「食べないべき」でもない――体感で選ぶという第三の視点

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「食べなきゃダメ」の声に振り回された朝

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「朝食は絶対に食べなきゃダメ」「脳が働かないよ」――そう言われて無理にトーストを口に押し込んだ朝、午前中ずっと胃が重かった経験はないでしょうか。

食べたほうがいいのはわかっている。

でも体が受け付けない日がある。

そんなとき、「自分はダメなんだ」と感じてしまう方は少なくないと思います。

朝食をとらなかった日に限って、周囲の「ちゃんと食べた?」という一言が胸に刺さる。

その小さな罪悪感が、毎朝の食卓をどこか窮屈にしているのかもしれません。

この記事では、朝食を「食べるべき」とも「食べないべき」とも言いません。

代わりに、その日の自分の体感で選ぶという第三の視点を提案します。

「朝食は一日で最も重要な食事」の背景

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この言葉を一度は耳にしたことがあると思います。

実はこのフレーズ、もともとはシリアルメーカーのマーケティングスローガンとして広まったものだという指摘があります(Betts et al., 2016)。もちろん、マーケティング発だからといって朝食に意味がないわけではありません。

ただ、「絶対的な正解」として語られるようになった背景には、科学以外の力も働いていた可能性があるということです。

朝食と健康の関連を調べた研究にも、注意が必要な点があります。

朝食研究における因果表現の不適切な使用や引用バイアスの存在を指摘した報告もあり(Brown et al., 2013)、「朝食を食べないと太る」といった主張は、ランダム化比較試験(RCT)では必ずしも支持されていません。

13件のRCTを対象としたメタ分析では、朝食群はむしろ1日あたり約260kcal多く摂取し、体重も平均0.44kg多かったという結果が報告されています(Sievert et al., 2019)。

一方で、朝食欠食と健康リスクの関連を示す観察研究も複数あります。

日本人82,772人を対象としたJPHC Studyでは、朝食欠食と脳出血リスクの関連が報告されています(Kubota et al., 2016)。また、観察研究のメタ分析でも朝食欠食と心血管リスクの関連が示唆されています(Wang et al., 2024)。

ただし観察研究では、朝食を食べない人に喫煙や運動不足などの習慣が重なりやすいという交絡の問題があり、朝食そのものが原因かどうかは判断できません。

つまり、「食べるべき」も「食べなくていい」も、どちらか一方を断言できるほど研究は単純ではないのです。

健康改善に疲れたときの「変えなくていいもの」という視点でも触れましたが、正解を追い続けること自体が疲れの原因になることがあります。

朝食は一日の流れの中にある

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朝食を「食べるか・食べないか」の二択で考えると行き詰まります。

でも視点を少し引いてみると、朝食はその日一日の食事の流れの一部にすぎません。

インスリン感受性には概日リズムが関与しており、一般的に朝から午前中にかけて高い傾向があると考えられています。

朝食を含む早い時間帯の食事パターンが、体重や血圧の指標に好ましい影響を示したという報告もあります(Jamshed et al., 2022)。

このRCTでは、90名を対象に14週間の早期時間制限食を検証し、対照群と比べて約2.3kgの体重減少が観察されました。

また、朝型の人と夜型の人では、同じ朝食でも代謝への影響が異なる可能性を示唆するレビューもあります(Franzago et al., 2023)。クロノタイプ(体内時計の個人差)によって、最適な食事タイミングが変わりうるという視点です。

こうした研究が教えてくれるのは、「朝食を食べるかどうか」よりも、「自分の生活リズムの中でどう食べるか」のほうが大切かもしれないということです。

数値は正常でも体感が違うときに書いたように、一般論と自分の体感にはズレがあって当然です。

食べる日も食べない日も、どちらもあっていい

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では、実際にどう選べばいいのでしょうか。大げさなルールは必要ありません。

朝、自分の体に3つだけ聞いてみてください。

  • 「お腹は空いている?」 ── 空腹感があるなら、体が求めているサインかもしれません
  • 「午前中は何をする?」 ── デスクワーク中心の日と、体を動かす日では必要なエネルギーが違います
  • 「昨晩はどう過ごした?」 ── 遅い夕食の翌朝と、早めに食べ終えた翌朝では、体の準備状態が異なります

答えは日によって変わります。

月曜は食べたほうが調子がいいけれど、土曜はコーヒーだけで十分。

そういう揺らぎがあるのは自然なことです。

カロリー計算に疲れたときの「対話する食事」という選択肢でも触れていますが、食事は計算するものではなく、自分の体との対話です。

体の反応をサインとして読むという考え方を朝食にも当てはめてみると、「食べたくない」は怠慢ではなく、体からのフィードバックとして捉えることができます。

また、タンパク質の摂取タイミングと朝食の関係を参考にしながら、食べる日の内容を工夫してみるのもひとつの方法です。

正解を手放すと、朝が少し楽になる

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朝食は「食べるべきもの」でも「食べなくていいもの」でもなく、その日の自分に合わせて選ぶ「選択肢」のひとつです。

義務感で食べる朝食より、体の声を聞いて選んだ朝食のほうが、きっと心地いい。

食べない日も、それはそれでいい。

大切なのは、どちらを選んでも自分を責めないことではないでしょうか。

明日の朝、まず自分の体に聞いてみてください。

「今日はどうしたい?」と。その小さな問いかけが、朝食との付き合い方を少しだけ変えてくれるかもしれません。

免責事項:
この記事は医療上のアドバイスを提供するものではありません。食事や栄養に関して不安がある場合は、医師や管理栄養士にご相談ください。

参考文献