「要望通りに作ったのに、なんか違うって言われた」
デザイナーなら、一度は経験があるはずです。
ヒアリングをして、参考サイトをもらって、丁寧に作った。なのに返ってくるのは「うーん、なんか違うんだよね」という曖昧なフィードバック。
何が違うのか聞いても、明確な答えは返ってこない。修正しても、また「違う」。
これ、あなたのせいじゃないかもしれません。
要望は「正解」ではない

ここで一つ、事実をお伝えします。
クライアントの要望は、本質的な正解ではありません。
「かっこよくしたい」「今っぽくしたい」「競合より良い感じに」
これらは要望のように見えますが、実は手段です。目的ではありません。
そして多くの場合、クライアント自身も「本当に何が欲しいのか」をわかっていない。
言語化できていないだけでなく、自分でも気づいていないことが多いのです。
だから、要望通りに作っても「違う」と言われる。
「作るだけ」では済まなくなっている

もう一つ、現場で起きていることがあります。
肩書きはデザイナー。でも実際にやっていることは:
- ヒアリング
- 提案
- 修正の交通整理
- 社内調整の橋渡し
作りながら、判断が必要なケースが度々ある。
これは「デザイナー」という役割の話ではなく、「作りながら意思決定を求められる立場」の話です。
進行管理やスケジュール調整の話ではなく、判断をどう組み立てるか、という意味でのディレクションの話でもあります。
そして、この立場にいる人が最も苦しむのが、「正解がわからないまま進まなければならない」という状況です。
要望を「正解に育てる」という考え方

ここで視点を変えてみます。
要望は「正解」ではない。でも、「間違い」でもない。
要望は、正解の種です。
最初は曖昧で、ぼんやりしている。
でも、ヒアリングを重ね、提案を出し、フィードバックをもらうことで、少しずつ輪郭が見えてくる。
デザイン制作とは、要望を満たす仕事だけではなく、要望を正解に育てていく仕事でもあるのです。
正解を育てる4つのステップ

では、具体的にどう進めればいいのか。
4つのステップで説明します。
1. 表層の要望を「そのまま」受け取る
最初の要望は、ほぼ間違いなく表層です。
- 「かっこよくしたい」
- 「今っぽくしたい」
- 「競合みたいな感じで」
ここで大事なのは、否定しないこと。
そして、そのまま正解だと思わないこと。
「なるほど、かっこよくしたいんですね」と受け取りつつ、これは出発点であってゴールではないと理解しておく。
2. フィードバックを「情報」として扱う
最初の提案を出すと、フィードバックが返ってきます。
「なんか違う」「もう少し〇〇な感じ」「イメージと違った」
これを「ダメ出し」と受け取ると、心が折れます。でも、情報として受け取ると、次の一手が見えてきます。
聞くべきは「どこが違いますか?」ではありません。
- 「何と比べて違うと感じますか?」
- 「それが解決すると、何が楽になりますか?」
- 「誰がこれを見て、どう思ってほしいですか?」
こう聞くと、フィードバックが「デザインの話」から「事業や現場の話」にシフトします。
3. 本当の課題を掘り当てる
フィードバックを情報として集めていくと、あるタイミングで「本当の課題」が見えてきます。
例えば:
- 社内で判断基準が共有されていなかった
- 情報が多すぎて、伝えたいことが埋もれていた
- 「かっこよさ」ではなく「安心感」が欲しかった
最初の要望とは、全然違う。
でも、これが本当に解決すべき課題です。ここが見えると、デザインの方向性が一気に定まります。
4. 当初と違う成果物に着地する
本当の課題が見えると、成果物は最初のイメージとは違うものになることが多い。
- 見た目はむしろシンプルになった
- 最初に求められていた「派手さ」はない
- でも、社内の合意が取れる。使われる。文句が出ない。
最初の要望通りには作っていない。でも、最初より「正解に近いもの」になっている。
これが、要望を正解に育てた結果です。
僕自身、最初は「要望を満たせばいい」と思って、何度も遠回りしました。でも、このプロセスを意識するようになってから、「なんか違う」の回数は確実に減りました。
修正は「失敗」ではない

このプロセスで最も大事なのは、修正を失敗だと思わないことです。
従来の考え方では:
- 修正 = 間違えた証拠
- やり直し = 後退
でも、組み立て思考で考えると:
- 修正 = 正解に近づくための情報
- やり直し = 精度が上がった証拠
フィードバックが来るたびに、正解の輪郭がクリアになっていく。だから、修正は前進です。
これは人生の選択においても同じ。正解を探すのではなく、選んだものを正解に育てていく。
デザインも人生も、組み立て方は同じなのです。
「一緒に作る」というスタンス

ここまで読んで、こう思うかもしれません。
「結局、クライアントの言うことを聞けってこと?」
違います。
一緒に正解を作るということです。
クライアントは課題を持っている。でも、言語化できていない。デザイナーはそれを形にする力がある。でも、課題の全体像は見えていない。
どちらか一方が正解を持っているわけではない。だから、一緒に組み立てていく。
この関係性が築けると、「なんか違う」は減ります。なぜなら、プロセス自体が共有されているから。
制作業務におけるデザインとは、要望を正解に育てる仕事でもある

この記事で伝えたかったことは、一つだけです。
デザイン制作は、要望を満たすだけが仕事ではない。要望を正解に育てていく仕事でもある。
最初の要望は、正解ではない。でも、間違いでもない。正解の種。
それを、ヒアリングとフィードバックを繰り返しながら、少しずつ育てていく。
修正は失敗ではなく、情報。やり直しは後退ではなく、前進。
そう捉えられるようになると、「なんか違う」は怖くなくなります。
完璧な要件定義を待ってから作り始めるのではなく、作りながら一緒に正解を見つけていく。
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正解を育てるには、まず自分の現在地を知ることから。
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クライアントの課題を掘る前に、自分自身を観測する習慣をつけてみてください。

