BeastgripのDOFアダプターを手に入れてから、写真を撮るのが楽しくて仕方ありません。最新のスマートフォンカメラとクラシカルなオールドレンズを組み合わせる、この少し変わった撮影スタイルの魅力にすっかり取り憑かれています。
特に気に入っているのは、高機能なスマートフォンであるiPhone 7 Plusにも関わらず、ピント合わせはマニュアル、手ブレ補正も効かないというハイテクとアナログの絶妙な矛盾。写真を撮るだけなら確かにもっと簡単な方法があるのですが、この独特な撮影体験がクセになっています。
今回は、手に入れたいくつかのオールドレンズの中でも、特にピンと来て愛用しているニコンの「Micro NIKKOR 55mm F3.5」についてご紹介します。このレンズとの出会いは、実はカメラ本体を持っていないのにDOFアダプターを購入したことがきっかけでした。レンズを探しているうちに、その奥深い世界に引き込まれていったのです。
カメラやレンズの専門家ではない私の視点から、この名門ニコンが誇るマクロレンズの魅力と、スマートフォンで使う際のポイントをお伝えしていきます。
Micro NIKKOR 55mm F3.5の基本情報と歴史的価値
マイクロニッコールは、ニコンが誇る歴史的なマクロレンズシリーズです。私が手に入れたのは、1973年6月に発売された3代目のMicro-NIKKOR-P・C Auto 55mm F3.5(P・Cオート)モデル。製造番号730001から811928まで生産された、マクロレンズ史に名を残す傑作レンズの一つです。
進化したレンズコーティング技術
3代目となる「P・Cオート」モデルの最大の特徴は、レンズの反射防止コーティングの多層化にあります。それまでの単層コーティングから進化し、以下の点が大きく改善されました:
- レンズの光透過率が向上
- フレアやゴーストへの耐性が強化
- より精細な描写が可能に
外観での見分け方
一見すると先代の「Pオート」モデルと区別が難しいものの、いくつかの特徴的な違いがあります:
- レンズ前面の飾りリングに「Micro-NIKKOR-P・C Auto」の刻印
- スクリューマウントの固定ネジがマイナスからプラスに変更
- 非Aiレンズながら、ニコンによる正規Ai改造品も存在
私自身、このレンズの詳細を調べれば調べるほど、その歴史的な価値と技術的な進化に魅了されています。より詳しい情報は、ニコンイメージングが公開している「ニッコール千夜一夜物語」シリーズでも紹介されています。特に第二十五夜と第二十六夜では、マイクロニッコールの開発秘話が詳しく語られており、レンズファンには必読の内容となっています。
3代目 Micro-NIKKOR-P・C Auto 55mm f=3.5 (P・Cオート)
3代目モデル ”P・Cオート” は レンズの反射防止コーティングが多層化されたモデルで旧モデルの単層コーティングに比べレンズの光透過率が向上し、フレアやゴースト耐性が良くなりました。左側写真の外観で ”Pオート”と見分けるのは殆ど不可能ですが、レンズ前面の飾りリングに白く刻印されたレンズ名が ”Micro-NIKKOR-P・C Auto” と黄色で表示した部分が追加されているので見分けがつきます。また、レンズのスクリューマウントをレンズ胴体に止めているネジが旧モデルではマイナスネジでしたがP・Cオートからプラスネジに変わりました。3代目モデルのマイナーチェンジはどうも無いようですが見つけられないだけかも知れません。非Aiレンズですが、全てのモデルでニコンによる正規Ai改造品が存在します。
発売開始は1973年6月。製造番号は730001~811928
歴代マイクロニッコール55mmレンズ 勢揃い – ブログやま帽子より引用
この辺りの記事もレンズに関しては参考になります。こういうの読むとワクワクしてしまいますね。
フォトライフ – ニッコール千夜一夜物語 | Enjoyニコン | ニコンイメージング
ニッコール千夜一夜物語 – 第二十五夜 | Enjoyニコン | ニコンイメージング
ニッコール千夜一夜物語 – 第二十六夜 | Enjoyニコン | ニコンイメージング
実写レビュー:伝説の「キレ」を体験する
オールドレンズの世界では「キレがいい」という表現をよく耳にします。このMicro NIKKOR 55mm F3.5も、その特徴を持つレンズの一つとして名高く、実際に使ってみてその評価を実感しています。
37年前から製造販売が続いているレンズが本当に名玉だった – toshiboo’s camera
驚きの解像力と描写力
「キレ」という言葉の正確な定義は難しいものの、実写で感じた特徴を具体的にお伝えします:
- 被写体の輪郭が明確に描写される
- ピントの合った部分としっかり分離される
- 細部まで鮮明に描写される質感表現
マクロレンズならではの versatility(汎用性)
3本のオールドレンズを使い比べる中で、このレンズの使いやすさは特筆すべきものがあります。その理由はいくつかあります:
- 近接撮影が可能で被写体に大きく寄れる
- 通常撮影でも優れた描写性能を発揮
- ピントの山が見つけやすく、ピント合わせが比較的容易
- 風景から小物まで幅広い被写体に対応
特に気に入っているのは、このレンズの懐の深さです。マクロ撮影という特殊性を持ちながら、普段使いのレンズとしても十分な実力を発揮します。37年もの長きにわたって製造・販売が続いたのも、このバランスの良さゆえかもしれません。
私のような「とにかく撮ってみる」というスタイルの撮影者にとって、この多様な撮影シーンへの対応力は大きな魅力となっています。
iPhoneで撮影したMicro NIKKORサンプル写真集
スマートフォンカメラの進化により、誰でも手軽に高品質な写真が撮れる時代になりました。しかし、DOFアダプターとMicro NIKKOR 55mm F3.5の組み合わせは、そこにまた違った魅力を加えてくれます。
撮影セットアップ
- 使用機材:iPhone 7 Plus
- レンズ:Micro NIKKOR 55mm F3.5
- アダプター:Beastgrip DOFアダプター
- 撮影モード:iPhoneカメラアプリ標準設定
作例と撮影のポイント
- 背景のボケを活かしたマクロ撮影
- 自然な色再現と立体感
- スマホカメラでは得られない独特の描写
- クラシカルな雰囲気の表現
- レンズの特性を活かしたハイライト処理
- コントラストと陰影の表現
まだ絞り値の使い分けなど、レンズの持つポテンシャルを十分に引き出せていない部分もありますが、スマートフォンだけでは決して得られない写真表現が可能になっています。このレンズならではの描写は、デジタルフィルターでは簡単に再現できない味わい深いものです。
実際の作例を通じて、このユニークな組み合わせがもたらす可能性の一端をご紹介しました。今後も撮影を重ねながら、新たな表現方法を探っていきたいと思います。