カロリー計算は悪者なのか

健康管理に取り組み始めると、多くの人がカロリー計算アプリを使い始めます。
食べたものを記録し、数字で把握することには確かに意味があります。
自分が思っている以上に食べていたことに気づいたり、栄養バランスの偏りが見えてきたりします。
ただ、ある段階から少し様子が変わることがあります。
数字を追うほど、自分の体の感覚が分かりにくくなっていきます。
「お腹が空いたかどうか」より「今日はあと何キロカロリー残っているか」が判断基準になっていく。
体の声よりアプリの表示を信じるようになっていく。
これは数字が悪いわけではありません。
数字との関係性が、いつの間にか変わってしまっただけなのかもしれません。
「管理する」から「対話する」へ

私自身も、食事記録をつけていた時期があります。
最初は純粋に「何を食べているか知りたい」という好奇心でした。
でも気づくと、食後に残る感覚が変わっていました。
満足感ではなく、「安心か罪悪感か」。
カロリーが予算内なら安心、オーバーしていたら罪悪感。
食事そのものの体験より、数字の結果で気分が決まるようになっていました。
このシリーズの[#1で触れたデータは判断ではなく視点のためにある」という考え方は、まさにここに関係してきます。
数字は「良い/悪い」を決めるためではなく、自分を知るための手がかりとして使えるものです。
数字も情報、体感も情報

カロリー計算を「やめるべき」とは思いません。
「見るな」ではなく「それだけで決めなくていい」というのが、今の私の感覚です。
数字は情報のひとつ。
体感も情報のひとつ。どちらか一方だけが正しいわけではありません。
たとえば、アプリ上ではカロリーが足りているはずなのに、妙にお腹が空く日があります。
逆に、数字的にはもっと食べられるはずなのに、もう十分と感じる日もあります。
以前なら「数字を信じなきゃ」と思っていたかもしれません。
でも今は、「体がそう言っているなら、それも情報だな」と受け取れるようになりました。
コントロール対象から参考情報に戻す

数字との関係を見直すとき、ひとつの問いかけが役に立ちます。
「この数字は、自分を縛るためのものか、自分を知るためのものか」
同じ数字でも、使い方で意味が変わります。
- コントロールの道具として使うと、数字に振り回されます
- 参考情報として使うと、数字と対話できるようになります
#4「健康改善の疲れを手放す」で触れた「頑張りすぎからの脱却」とも重なる話です。
数字を追い続けること自体が、知らず知らずのうちに疲労の原因になっていることがあります。
実際に変えてみて感じたこと
数字との距離を少し置いてみたら、いくつかの変化がありました。
まず、食事のストレスが減りました。
「今日はこれを食べても大丈夫か」といちいち計算しなくなった分、食べることへの気軽さが戻ってきました。
次に、「食べすぎたかも」という不安が減りました。
以前は少しでも多く食べると、すぐに「やってしまった」という感覚がありました。
でも今は、「少し多かったかもしれないけど、次の食事で調整すればいい」と思えるようになりました。
そして何より、「合っているかどうか」を体に確認する感覚が戻ってきました。
数字ではなく、食後の体調や満足感で「今日の食事はどうだったか」を感じ取れるようになりました。
数字を手放すのではなく、握り方を変える
誤解してほしくないのは、「感覚だけで食べればいい」と言いたいわけではないということです。
数字には数字の役割があります。
特に、自分の食事パターンを客観的に把握したいとき、栄養バランスの大まかな傾向を知りたいとき、数字は有用な手がかりになります。
ただ、数字が「唯一の正解」になってしまうと、体が発信している情報を見落としやすくなります。
#5「データを流れとして見る」で紹介した視点とも通じますが、一日単位の数字に一喜一憂するより、もう少し長い期間の傾向として捉えるほうが、数字との関係は健全になりやすいのではないでしょうか。
「正解」を求めない食事へ

カロリー計算を続けるか、やめるか。
どちらが正解かは、人によって違います。
今の自分にとって数字が役立っているなら、続ければいい。
数字に疲れているなら、少し距離を置いてみるのも選択肢のひとつです。
大切なのは、「数字で管理しなければならない」という思い込みから自由になることではないでしょうか。
数字は道具であって、主人ではありません。
このシリーズを通じて繰り返し伝えてきた「判断しない」「振り回されない」という姿勢が、もっとも分かりやすく問われるのが、この「数字との付き合い方」かもしれません。
数字を見るのをやめる必要はありません。
ただ、数字を見たあとに、自分の体にも聞いてみる。
その両方を参考にして、「今日はこれでいい」と思えたら、それで十分だと思います。
どなたかの参考になれば幸いです。
免責事項:
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスや診断を意図したものではありません。
食事管理や健康上の懸念がある場合は、医師や管理栄養士などの専門家にご相談ください。
