冬から春へ。揺らぎやすい時期に意識したい3つの栄養素

春が近づくと「なんとなく調子が悪い」──それは体が季節に適応しようとしているサイン

2月も後半に入ると、少しずつ日が長くなってきたことに気づきます。

コートを着て出かけたら思ったより暖かくて汗ばんだり、逆に薄着で出かけたら夕方には冷え込んでいたり。

この時期は「何を着ていけばいいのか分からない」という日が続きますね。

そんな季節の変わり目に、「なんとなく体が重い」「眠りが浅い気がする」「気持ちが落ち着かない」といった、はっきりしない不調を感じることはないでしょうか。

病院に行くほどではない。

でも、いつもの自分とちょっと違う。

もしそう感じているなら、それは体が季節の変化に適応しようとしている途中なのかもしれません。

この記事では、そんな揺らぎやすい時期に意識してみたい栄養素についてお伝えしていきます。

季節の変わり目に体が揺らぎやすい理由

冬から春にかけての時期は、私たちの体にとって「忙しい」時期です。

まず、気温の変動が大きくなります。

1日の中で10度以上の寒暖差があることも珍しくありません。

体は常に「今は温めるべきか、冷やすべきか」を判断し、調整し続けています。

日照時間も変化します。

冬至を過ぎてから少しずつ日が長くなり、体内時計もそれに合わせて調整を始めます。

さらに、この時期は気圧の変動も大きくなる傾向があります。

低気圧が通過するたびに、体は微妙な調整を求められます。

こうした外部環境の変化に対応しているのが、自律神経です。

自律神経は、体温調節、睡眠と覚醒のリズム、消化活動など、私たちが意識しなくても体が行っている調整を担っています。

季節の変わり目は、この自律神経にとって「負荷がかかりやすい時期」と言えます。

普段よりも多くの調整が必要になるため、体が疲れやすくなったり、いつものリズムが乱れやすくなったりするのですね。

自律神経と栄養素の関係

自律神経の働きを支えているのは、脳や神経で使われる「神経伝達物質」です。

神経伝達物質とは、神経細胞同士が情報をやり取りするときに使われる化学物質のこと。

セロトニン、GABA、ドーパミンといった名前を聞いたことがあるかもしれません。

これらの神経伝達物質は、体の中で「材料」から作られます。

その材料となるのが、食事から摂る栄養素です。

つまり、食事で摂る栄養素は、神経伝達物質の「原料」として、間接的に自律神経の働きを支えていると考えることができます。

もちろん、栄養素を摂ったからといって、すぐに自律神経が整うわけではありません。

体の仕組みはそれほど単純ではないですし、個人差も大きいものです。

ただ、体からのサインを受け取りながら、その材料となる栄養素を「少し意識してみる」ことには、意味があるかもしれません。

この時期に意識したい3つの栄養素

季節の変わり目に意識してみたい栄養素として、ここでは3つをご紹介します。

1. ビタミンB群──神経系の働きを支える

ビタミンB群は、B1、B2、B6、B12など、複数のビタミンの総称です。

これらは神経系の正常な機能維持に重要な役割を果たしていることが知られています。

特にビタミンB6は、セロトニンやGABAといった神経伝達物質の合成に必要な「補酵素」として働きます。

また、ビタミンB群はエネルギー代謝にも関わっています。

食べたものをエネルギーに変える過程で必要になるため、「なんとなくだるい」という感覚とも関係があるかもしれません。

ビタミンB群が多く含まれる食品:

  • 豚肉(B1が豊富)
  • 鶏肉、魚(B6が豊富)
  • 卵、乳製品(B2、B12が豊富)
  • 玄米、雑穀
  • 納豆、豆類

2. マグネシウム──筋肉のリラックスと休息

マグネシウムは、体内で300以上の酵素反応に関わるミネラルです。

筋肉の弛緩や、神経の興奮を抑える働きに関与していることが分かっています。

「体が緊張しやすい」「肩こりがひどい」「眠りが浅い気がする」といった感覚がある方は、マグネシウムを意識してみるのも一つの選択肢かもしれません。

実は、日本人のマグネシウム摂取量は推奨量を下回る傾向にあります。

厚生労働省の調査によると、平均摂取量は247mg/日程度で、推奨量の70〜90%にとどまっています。

現代の食生活では、意識しないと不足しやすいミネラルの一つと言えそうです。

マグネシウムが多く含まれる食品:

  • アーモンド、カシューナッツなどのナッツ類
  • ほうれん草、小松菜などの葉物野菜
  • 豆腐、納豆などの大豆製品
  • わかめ、ひじきなどの海藻類
  • 玄米

3. トリプトファン──セロトニンの材料

トリプトファンは、必須アミノ酸の一つです。

体内で作ることができないため、食事から摂る必要があります。

トリプトファンが注目されるのは、セロトニンの材料になるからです。

セロトニンは「心の安定」に関わる神経伝達物質として知られています。

そして、このセロトニンは夜になるとメラトニンに変換されます。

メラトニンは睡眠に関わるホルモンです。

つまり、トリプトファン → セロトニン → メラトニン という経路が体内にあり、この流れが日中の心の安定と夜の睡眠の両方に関わっていると考えられています。

トリプトファンが多く含まれる食品:

  • 肉類(鶏肉、牛肉、豚肉)
  • 魚類(カツオ、マグロ、サケ)
  • 乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト)
  • 大豆製品(豆腐、納豆)
  • バナナ

食事に取り入れるときのポイント

ここまで3つの栄養素をご紹介しましたが、大切なのは完璧を目指さないことだと思っています。

「この栄養素が足りていないかも」「あれも食べなきゃ」と考えすぎると、それ自体がストレスになってしまいます。

おすすめしたいのは、「少し意識する」というスタンスです。

例えば:

  • 朝食に卵を1つ追加してみる(ビタミンB群、トリプトファン)
  • おやつにナッツを少し食べる(マグネシウム)
  • 味噌汁にわかめを入れる(マグネシウム)
  • 夕食に魚を選ぶ日を週に1〜2回作る(ビタミンB群、トリプトファン)

こうした小さな変化を、無理のない範囲で取り入れていく。

まずは小さい取り組みからで十分だと思います。

また、これらの栄養素は「これだけ摂ればOK」というものではありません。

さまざまな栄養素が協力し合って働いているため、特定の栄養素だけを大量に摂るよりも、バランスよく食べることの方が大切です。

栄養だけでなくリズムも味方につける

季節と栄養素の関係を考えるとき、「何を食べるか」と同じくらい「いつ食べるか」も意識してみる価値があります。

特にトリプトファンからセロトニンへの変換には、日光が関係しています。

朝の光を浴びることでセロトニンの合成が促進され、それが夜のメラトニン分泌につながっていきます。

ですから、トリプトファンを含む食品は、朝や昼に摂るのが理にかなっていると言えるかもしれません。

朝食で卵やチーズ、牛乳などを摂り、午前中に日光を浴びる。

こうした生活リズムが、結果的に夜の睡眠をサポートしてくれる可能性があります。

逆に、夜遅くまでブルーライトを浴びていると、せっかくのトリプトファンも活かしきれないかもしれません。

栄養と生活リズム。

どちらか一方ではなく、両方を少しずつ意識してみることで、季節の変わり目を穏やかに過ごせるかもしれませんね。

まとめ

冬から春への季節の変わり目は、気温差、日照時間の変化、気圧の変動が重なり、自律神経に負荷がかかりやすい時期です。

この時期に「なんとなく調子が悪い」と感じるのは、体が季節に適応しようとしている途中のサインかもしれません。

そんなときに意識してみたい栄養素として、今回は3つをご紹介しました:

  1. ビタミンB群:神経系の機能維持とエネルギー代謝に関わる
  2. マグネシウム:筋肉のリラックスや神経の落ち着きに関与
  3. トリプトファン:セロトニン、そしてメラトニンの材料になる

これらを「完璧に摂ろう」とする必要はありません。

日々の食事の中で「少し意識する」くらいがちょうどいいと思います。

そして、何を食べるかと同じくらい、いつ食べるか、いつ光を浴びるかといった生活リズムも大切です。

季節の変わり目は、体にとって調整の時期。

無理をせず、体の声に耳を傾けながら、穏やかに春を迎えられるといいですね。

この記事は個人の経験と考え方を共有するものであり、医療アドバイスではありません。
健康上の懸念がある場合は、医師にご相談ください。

参考文献